染太夫一代記(読み)そめたゆういちだいき

改訂新版 世界大百科事典 「染太夫一代記」の意味・わかりやすい解説

染太夫一代記 (そめたゆういちだいき)

義太夫の6世竹本染太夫(1797-1869)の自伝原題は彼の屋号・本名に基づく《金屋新兵衛一代記》。29巻。染太夫は1865-69年(慶応1-明治2),文楽芝居の紋下を勤めた幕末期名人のひとりで,生い立ちから実太夫・4世梶太夫時代の事跡を読物風に面白くまとめたもの。文体も浄瑠璃風で,自筆の彩色挿絵入り。修業の話,師匠越前大掾や同時代の浄瑠璃人,因講,旅興行,江戸の浄瑠璃界,社会風俗など,生き生きとした筆致で述べられ,浄瑠璃史研究上,欠かせぬ史料となっている。石割松太郎が個人誌《演芸月刊》に《染太夫日記》と題して途中まで翻刻。のち井野辺潔が全巻を《染太夫一代記》として刊行。
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