有意味受容学習(読み)ゆういみじゅようがくしゅう(英語表記)meaningful reception learning

最新 心理学事典 「有意味受容学習」の解説

ゆういみじゅようがくしゅう
有意味受容学習
meaningful reception learning

オーズベルAusubel,D.P.(1963)によって提唱された学習法であり,学習者の主体的な問題解決活動を前提としない受容的方法を用いて学習材料を利用可能な知識として効率よく獲得できるようにすることを目的としている。オーズベルらは,学習を機械的学習-有意味学習,および受容学習-発見学習という独立した二つの次元に基づいて区分した。機械的学習rote learningは学習材料をそのまま記憶したり教材間の恣意的な連合を形成したりすることを主とした学習であるのに対して,有意味学習meaningful learningは学習者がすでにもっている知識に学習材料をうまく関連づけることによって新しい概念を獲得しようとする学習である。また,受容学習reception learningは指導者によって提示される学習内容に基づいて進められる学習であるのに対して,発見学習discovery learningでは主要な学習内容はあらかじめ提示されず学習者自身がそれを発見していく学習である。この2次元を組み合わせることで「機械的受容学習」「機械的発見学習」「有意味受容学習」「有意味発見学習(いわゆる発見学習)」の四つの学習型に分類される。学校教育においては,膨大な量の言語情報が提示され,学習者はそれらをよく理解し,すでにもっている認知構造(知識)と十分に関連づけることによって,新しい概念を形成することが要求される。このような学習場面において知識獲得をするためには,機械的学習ではあまりにも無意味なものになりすぎ,発見学習では学習されるべき内容が直接的には提示されないため,学習者は複雑な問題解決過程を求められるうえ,解決されるまでは学習内容の内面化が保留されることになる。そこで,学校教育においては学習すべき内容をすべて最終的な形で学習者に提示し,それを有意味な概念として獲得していく有意味受容学習が最も適した方法であると主張している。

 有意味受容学習は,⑴学習者が有意味な学習の構えを有している,⑵学習材料が学習者にとって潜在的に有意味である,という2点を前提として成立する。つまり,学習者が新しい概念や情報に接したとき,それを自分自身の既有の認知構造に組み入れて解釈しようとする性向を有しており,提示される学習材料が学習者の知的能力や知識に応じた適切なもの(潜在的に有意味)であれば,学習者は自らの力でその意味を理解し,それを利用可能な知識として獲得することができると考えるのである。ここで重要なことは,いかにすれば新しい学習材料を認知構造の中に効率よく包摂させることができるかである。そのためにオーズベルは,先行オーガナイザーadvance organizerという概念を導入した。先行オーガナイザーは,学習材料に先立って提示する学習内容についての抽象的,一般的,包括的な情報であり,学習者の認知構造と学習内容とを橋渡しする役割をもつものである。適切な先行オーガナイザーを用いれば,のちに提示される学習材料が認知構造の中にある類似した概念と明確に区別されることになり,知識への安定した組み入れと保持を高める機能がもたらされると考えられている。先行オーガナイザーとしては,学習材料の主要な内容を概観できる情報を提供する説明オーガナイザーと,学習内容と学習者がすでにもっている知識との類似点・相違点をわかりやすく示す比較オーガナイザーの2種類が想定されている。オーズベルとフィッツジェラルドFitzgerald,D.(1961)は,アメリカの大学生仏教教義を学習させる課題を用いて,仏教の主要な思想をまとめた文章(説明オーガナイザー)または仏教とキリスト教の類似点・相違点をまとめた文章(比較オーガナイザー)を先行提示する実験行ない,比較オーガナイザーが既有知識(キリスト教の知識)の低い学習者における仏教の理解と保持を促進する効果をもつこと,説明オーガナイザーも知識の保持に一定の効果をもつことを見いだした。このことから,先行オーガナイザーが学習材料と知識との弁別可能性を高め,新しい情報を知識に組み入れる機能をもつとしている。 →教授学習 →発見学習
桐木 建始〕

出典 最新 心理学事典最新 心理学事典について 情報