有度郡・有渡郡(読み)うどぐん・うどぐん

日本歴史地名大系 「有度郡・有渡郡」の解説

有度郡・有渡郡
うどぐん・うどぐん

駿河国の西部に位置した郡。西は益頭ましず(益津郡)志太しだ郡、北は安倍あべ郡、北東廬原いおはら(庵原郡)に接し、東から南は駿河湾に面する。近世には有渡郡と記されるようになる。郡域はおおよそ現静岡市南部と清水市の南端部に相当する。

〔古代〕

和名抄」東急本国郡部に「有度」とみえ、「宇止」の訓がある。古代の郡域は前述のとおりであるが、真壁まかべ郷の比定地とかかわり、現岡部おかべ町の一部も含む可能性がある。安倍郡との郡境については諸説あるが、西は日本にほん坂より現静岡市丸子まりこに至り、近年発見された曲金北まがりかねきた遺跡(静岡市のJR東静岡駅付近)の道路跡を経て清水市吉川きつかわに至る古代東海道推定ルート上とする説が妥当であろう。廬原郡との郡境はともえ川で、有度郡はその南岸(右岸)とする説もあるが、従来は有度郡とされてきた現清水市三保みほ付近などが廬原郡の一部である可能性もある。いずれにしても同郡域には、西に高草たかくさ山、東に有度山があり、その中間に安倍川下流域の沖積地が広がっていた。

「和名抄」には内屋うつのや真壁他田おさだ新居にいい託美たくみ嘗見なめみ会星あうほしの七郷がみえ、ほかに平城京跡出土木簡易美かみ郷・山家やまいえ郷がみえる。天平七年(七三五)一〇月の平城京跡出土木簡(「平城宮木簡概報」二九―三二頁)にみえる「□度里」は、木簡の年代から郷里制下のもので、有度郷有度里の可能性も大きい。その場合の比定地は現静岡市有東うとう付近と考えられる。郡名の初見は同九年一〇月の同木簡(同書三一―二五頁)にみえる「有度郡山家郷竹田里」とされる。なお「日本書紀」大化二年(六四六)三月一九日条にみえる「菟礪の人」が当郡の人とする説もある。「延喜式」神名帳に伊河麻いかま神社(現静岡市稲川の同名社に比定)池田いけだ神社(現同市池田の同名社に比定)草薙くさなぎ神社(現清水市草薙の同名社に比定)の三座がみえる。そのうち池田神社は、「国造本紀」の廬原国造の条にみえる「池田坂井君」とかかわるともいわれる。有度郡家は現静岡市曲金、あるいは安倍川西岸の旧長田おさだ村に所在したとする説などがあるが、奈良・平安期の木簡や中世の呪符・絵馬などが出土した静岡市宮川みやがわなどの神明原しんめいばら元宮川もとみやがわ遺跡とする説も有力である。同遺跡にも近い片山かたやま廃寺は七間四間の金堂と七間四間の講堂のほか僧房もあり、駿河国分寺の有力候補とされるが、塔や経蔵などの跡が未検出のため国分寺説を否定し、有度郡の郡領氏族である有度君の氏寺とする説もある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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