書立(読み)かきたてる

精選版 日本国語大辞典 「書立」の意味・読み・例文・類語

かき‐た・てる【書立】

〘他タ下一〙 かきた・つ 〘他タ下二〙
① (「たてる」は、目だつようにする、りっぱにするの意)
(イ) 美しくりっぱに書く。字などをじょうずに飾りたてて書く。
※能因本枕(10C終)二二「人のもとにわざと清げに書たててやりつる文の返事」
(ロ) (新聞、雑誌の記事などを)目だつように、センセーショナルに書く。大々的にとりあげて書く。
雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉下「別して此の節小新聞では、形跡もないことを自分で見て来た様に書き立て」
② (「たてる」は、数えあげる意) ひとつひとつ箇条書きにする。項目などを並べて書く。一つ書きにする。
※栄花(1028‐92頃)三六「内に内の大殿の三姫君参らせ給べしといふ事出で来て、御調度の事かきたてておぼしめし急ぐ程に」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一一「古今その例、甚だ多く、歴挙(〈注〉ノコラズカキタテル)するに暇あらず」
③ (「たてる」は、ある動作をしたばかりの意か)
(イ) 書き終える。書いて仕上げる。
※諷謌鈔(1600頃)五「一日経(いちにちぎょう)頓写とて、大勢あつまりて、一度に経を書きたつるを云」
(ロ) 書き始める。また、新たに書く。
※天草本平家(1592)一「ホウブッシュウ トユウ モノガタリ ヲ caqitaterareta(カキタテラレタ) ト、キコエテ ゴザル」

かき‐たて【書立】

〘名〙
① (「たて」は特にある動作をすることの意)
(イ) 特にある部分をとり出して書くこと。強調して、また目だつように書くこと。また、そのもの。
(ロ) 一つ一つ書き並べること。箇条書にすること。順序に従って書くこと。また、そのもの。箇条書。一つ書き。目録書。
※枕(10C終)二七八「四人づつかきたてにしたがひて、それ、それと呼び立てて乗せ給ふに」
② (「たて」は、動作が終わったばかりの意) 書き終わったばかりであること。また、そのもの。あるいは、ちょうど書き終わった結果、新しくできたもの。書いて間もないもの。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「書立」の意味・わかりやすい解説

書立 (かきたて)

古文書の様式上,ひとつひとつ個条書きに書いて列挙すること。またその文書。目録書や家数人数書立がそうであるが,その際あらかじめ雛形として下付される文書を書立案文(かきたてあんもん)と言った。1592年(文禄1)豊臣秀吉朝鮮侵略に備えて全国に家数人数書立の差出しを命じた人掃(ひとばらい)令の中に,〈奉公人ハ奉公人,町人ハ町人,百姓ハ百姓,一所ニ可書出事,但書立案文別紙遣之〉とあることはよく知られている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報