旧中込学校(読み)きゅうなかごみがっこう

国指定史跡ガイド 「旧中込学校」の解説

きゅうなかごみがっこう【旧中込学校】

長野県佐久(さく)市中込にある学校。校舎は洋風の木造2階建てで屋上に八角の太皷櫓(たいこやぐら)を置き、表玄関と裏玄関がある。表玄関の正面はとくに意匠をこらして円柱を配した吹き抜けである。2階にはベランダがあり、ガラス戸の窓にはすべて鎧戸(よろいど)がつけられ、廊下の丸窓や欄間(らんま)にはモダンなステンドグラスの窓をはめ込み、外壁はペンキで仕上げている。内部の壁は漆喰(しっくい)を塗り、1・2階とも中廊下式で両側に教室などを配し、寄せ棟造りの屋上にそびえる太鼓櫓には回り階段で上る。櫓の四方には窓を開き、天井中央から太鼓を吊って櫓上に東西南北を示す金属製の文字板をつけた鉄棒を立て、銅線を結びつけて避雷針とした。そもそもは1872年(明治5)の学制発布を受けて、翌年に下中込村の小林寺を仮校舎として発足し、「成知(せいち)学校」と称したが、翌々年から新築に取りかかり、下中込村字前林に敷地を買収した。校舎はその年にほぼ落成し、寺から移転すると校名を「中込学校」と改めた。寒村にもかかわらず工事費はほとんど村内全戸の寄付でまかない、最新式の学校を建造した。また、設計建築を請け負った市川代治郎は同村出身で、アメリカから帰国した新進の建築技師だったことは注目される。1969年(昭和44)に国の史跡に指定された。1877年(明治10)に建てられた聚待所(しゅうたいじょ)(集会所)はすでにないが、本館と学校敷地はかつての姿をとどめ、現在は隣接して資料館がある。JR小海線滑津(なめづ)駅から徒歩約5分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報