方面委員制度(読み)ほうめんいいんせいど

日本大百科全書(ニッポニカ) 「方面委員制度」の意味・わかりやすい解説

方面委員制度
ほうめんいいんせいど

地域の救済行政を補完する名誉職委員で、第二次世界大戦後の民生委員前身。19世紀後半から西欧では救貧法の適正な実施を目的に民間の委員が設置され、それらを参考にした制度が大正期の米騒動前後から各地で創設され始める。1917年(大正6)には岡山県で済世顧問(さいせいこもん)制度が、翌年には東京府慈善協会による救済委員制度が、米騒動直後に大阪府で方面委員制度が創設された。名誉職委員として小学校区を一方面とした地域を担当すべく、中間層である商店主・工場主・医師・住職など地域の実情に詳しい人々が委嘱され、生活相談・指導、戸籍整理、金品給与などを行った。この制度が全道府県に広がり、救護法(1929年(昭和4)制定1932年施行)の実現に際しては政府当局への働きかけを行い重要な役割を果たした。1936年制定の方面委員令により全国的な統一が図られ、同年の救護法施行令改正によって救護事務の補助機関として位置づけられた。戦時厚生事業下では国家統制の一翼をも担った。

[池本美和子]

『全国民生委員児童委員協議会編『民生委員制度七十年史』(1988・全国社会福祉協議会)』『原泰一著『戦前期社会事業基本文献集11 方面事業』(1995・日本図書センター)』

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