放射線増感剤(読み)ほうしゃせんぞうかんざい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「放射線増感剤」の意味・わかりやすい解説

放射線増感剤
ほうしゃせんぞうかんざい

悪性腫瘍(しゅよう)の放射線療法に用いられる薬剤で、腫瘍放射線感受性を選択的に増強して放射線による治療効果を高めるものをいう。製品にはブロクスウリジンの注射剤がある。ブロクスウリジンは、DNAデオキシリボ核酸)の構成成分であるチミジン化学構造が類似しているため、細胞増殖過程でDNA中にチミジンのかわりに取り込められ、このものが細胞の放射線や紫外線照射に対する感受性のみを高めるわけで、生命維持や増殖にはほとんど影響を与えることはない。

[幸保文治]

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世界大百科事典(旧版)内の放射線増感剤の言及

【癌】より

…発生装置は,シンクロトロン,サイクロトロン,シンクロサイクロトロンなど大規模なものが要求される。 放射線の効果を高める薬剤である放射線増感剤は,低酸素状態にある癌細胞にも放射線が有効に働くことをねらったもので,ミソニダゾールが試みられている。 化学療法は,癌が全身に広がっていて,外科手術も放射線療法も適用できない場合や,あるいは外科的ないし放射線による治療後に転移巣をたたいたり,転移を予防する目的で行われる。…

※「放射線増感剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」