採炭機(読み)サイタンキ

デジタル大辞泉 「採炭機」の意味・読み・例文・類語

さいたん‐き【採炭機】

石炭を採掘するのに用いられる機械類。コールカッタードラムカッターコンバインホーベルなど。

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精選版 日本国語大辞典 「採炭機」の意味・読み・例文・類語

さいたん‐き【採炭機】

〘名〙 石炭を採掘する機械。主として坑内で炭層を掘削するのに用いられるものをいう。
※鉛の卵(1957)〈安部公房〉一「その後、採炭機の振動によって、機能を回復

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改訂新版 世界大百科事典 「採炭機」の意味・わかりやすい解説

採炭機 (さいたんき)

炭鉱の坑内で石炭を採掘するために,炭層を掘削する機械。ドラムカッター,ホーベル,コンティニュアスマイナーなど,いろいろな種類のものが現在使用されている。

1861年にイギリスの炭鉱で使用されて,世界で初めて成功した採炭機は,アイアンマンiron manと呼ばれ,人間がつるはしを水平に振るう動作をまねて,炭層の下部に水平な溝を作る作業(下透し作業)を行うものであった。このアイアンマンの成功に刺激されて,19世紀末までには,その後長く使用されることになったチェーンカッターchain cutter(ジブカッターjib cutter,コールカッターcoal cutterとも呼ばれる)や,水平面内を回転する円板に刃物をとりつけたディスクカッターdisc cutter,水平軸を有する丸棒に多数の刃物をとりつけたバーカッターbar cutterなどがつぎつぎに発明され,いずれも炭層の下透し作業に用いられた。20世紀にはいると,下透し作業の後の打落し作業に用いるコールピックが発明された。また,チェーンカッターの改良が進み,さらに従来より飛躍的に強いチェーンが製造されるようになったため,チェーンカッターが急速に普及し,1930年ころにはディスクカッターやバーカッターは姿を消した。

 チェーンカッターは,ジブと呼ばれる長方形の枠の周囲を回転するチェーンに多数の刃物をとりつけたもので,のこぎりと似た原理で炭層に溝を作る採炭機である。日本でも1920年代にはいると,このチェーンカッターを導入して好成績をあげる炭鉱が出現し,30年には国産化も始まった。このころまでの採炭機の動力源圧縮空気(圧力5~6kgf/cm2)で,その出力も30kW程度であったが,40年ころには,電動機が使用されるようになり,出力も45kW程度に増大した。さらに,採掘された石炭を積みこむ装置を備えた採炭機(カッターローダーcutter loader)の開発が,主としてイギリスで試みられた。

 40年代にアメリカでは,残柱式(柱房式)採炭法に使用する採炭機の開発が行われ,46年にはコンティニュアスマイナーが出現した。他方ドイツでは,1941年に,長壁式採炭法の切羽で炭壁をかんなのように大きな刃物で削り取る形式の採炭機であるホーベルが実用化された。さらに,第2次世界大戦が終了して,戦後の復興期にはいると,52年にイギリスで,水平軸のまわりを回転する円筒の周囲に多数の刃物をとりつけて,炭壁を切削する採炭機であるドラムカッターが発明された。チェーンカッターなど従来の採炭機は下透しを目的としたもので,下透しをしたのちコールピックや削孔発破によって打落し作業を行うために人力を要した。これに対して,ドラムカッターやホーベルは炭壁の全面を機械で切削するので,あらためて打ち落とす必要はなくなり,その後世界的に普及して,70年ころにはチェーンカッターは姿を消すに至った。

ドラムカッターは和製語。水平軸にとりつけられた直径1.0~1.8m,厚さ数十cmのドラムが回転して,その周囲にとりつけられた刃物で炭層を切削する形式の採炭機である。原則として切羽に沿って敷設されたダブルチェーンコンベヤ上を滑るそり(スキッド)の上に機体が載っている。最初に発明されたときは,1個のドラムが機体に固定された形式であったが,その後,油圧で上下するアームの先端にドラムをとりつけて,炭層の上半も切削できる形式のものが開発された。最新式のものは,機体の前後端にアームがあり,これらのアームの先端に各1個のドラムがとりつけられている。ドラムは電動機によって駆動され,毎分40~50回転する。その周囲および前面には,超硬合金チップを埋め込んだ刃物(カッターピック)が数十個とりつけられ,ドラム後方には,切削された石炭をコンベヤ上にかき寄せるための装置がとりつけられている。切羽に沿って毎分3~5mの速さで移動しながら採炭を行う。

切羽に沿って敷設されたダブルチェーンコンベヤをガイドにして,くさび形の刃物を縦に並べた機体(ホーベル本体)をチェーンで引っ張って,炭壁をかんなのように切削する形式の採炭機である。初めて実用化されたころは,切羽入口の坑道に巻上機をおいて,ホーベルを毎分6~8mの速度で引っ張り,30cm程度の深さに炭壁を削っていた。1949年に,コンベヤとホーベルとを共通の電動機で駆動して,切削速度を毎分20m程度に増加し,その代りに1回に切削する深さを5~15cmに減らした新型が開発され,急速に普及した。その後,さらに切削能力を増大して,より強固な炭層でも切削できるようにするため,コンベヤとホーベルの原動機を別々に設けるようになった。最新式のホーベルでは,高さ1.6m,長さ3m程度のホーベル本体を,切削速度毎分30m以上で炭壁に沿って往復させ,片道数cmの深さで炭壁を切削する。

残柱式採炭法で用いられる採炭機の代表的なもので,垂直面内を循環するエンドレスチェーン数本を重ねた切削部と,積込運搬装置とを備え,クローラーで走行する形式の採炭機をいう。アメリカやオーストラリアの炭鉱では最も普通に用いられている採炭機であるが,日本では北海道の釧路炭鉱で用いられているだけである。1946年に出現したときは,エンドレスチェーンに一定間隔で刃物(カッターピック)がとりつけられていたが,最新式のものは,チェーンで駆動される切削部先端のディスクに刃物がとりつけられている。切削部を油圧ラムで上下させ,クローラーで機体を前進させて採炭を行う。切削された石炭は,機体前部のかき寄せ式積込装置で,機体中央を貫通するチェーンコンベヤ上にかき込まれ,さらに機体後方のコンベヤに送られて,シャトルカーなどに積みこまれて搬出される。全高1m,全長10m,全幅2.5mで,電力によって駆動される。採炭能力は毎分4~6t,走行速度毎分12m程度である。

先端のとがった丸棒形の工具(ピックビット)を炭層に押しつけて,圧縮空気で駆動されるピストンで打撃して,石炭を破砕する機械である。本体は,打撃ピストンと弁装置のついたシリンダーであり,30~40kgfの人力でピックビットを炭層に押しつければ,自動的にピストンが往復して,毎分550~1200回程度の打撃を与える。重量は8~14kg。主要な採炭機であるドラムカッターやホーベルは,傾斜20度以下の炭層でないと使用することが困難である。そのため,急傾斜の炭層では,削孔発破とコールピックによって炭層を掘削して採炭が行われることが多い。

急傾斜の炭層で,水力ジェットを使って採炭するとき用いるノズルとその支持装置のことをいう。圧力50~140kgf/cm2の水を,内径20~30mmのノズルから吹き出して,炭層を破砕し,落下してきた石炭を水流で搬出する。日本では北海道の砂川炭鉱で用いられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「採炭機」の意味・わかりやすい解説

採炭機
さいたんき
coal mining machine

石炭を掘取るための機械の総称。切羽 (きりは) において炭層の穿孔,切断,突きくずし,剥離などを行う機械。従来の手で保持できる小型のものに,オーガドリル,コールピック,コールカッタなどがあり,圧縮空気,電気を動力としている。これらのほかに,長い切羽面で活躍する大型の機械が普及したのが近年の大きな特色である。チェーン式コールカッタに積込み機,コンベヤ設備を組合せて,切削と積込みが同時にできるホーベルやシェアラ (ドラムカッタ) などがあり,採炭形式を一新させている。外国に多い露天掘りにおける採炭機は,土木機械とほとんど異ならない。

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