振・奮・揮(読み)ふるう

精選版 日本国語大辞典 「振・奮・揮」の意味・読み・例文・類語

ふる・う ふるふ【振・奮・揮】

[1] 〘他ワ五(ハ四)〙
① 振り動かす。ゆり動かす。
落窪(10C後)一「心さわぎて、起ちゐふるひ、紐解きて求むれど、絶えてなければ」
今昔(1120頃か)七「俄に雨降り雷電して、山を振ふ事有り」
② (揮) 思うままに取り扱う。棒状のものを縦横に駆使して用いる。
※蘇悉地羯羅経略疏寛平八年点(896)七「三蜜の智劔を揮(フルひ)て、麁細執を断つ」
※あきらめ(1911)〈田村俊子〉二〇「額は当時の名の響いた画家文士等が、絹地に一筆づつ揮ったものだった」
③ 十分にあらわし示す。腕力・能力・威力・権力などを発揮する。ふり回す。「熱弁をふるう」「暴力をふるう」
※守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)一〇「獄卒瞋れる目をもて威を振(フルフ)
④ (奮) 気力をわき起こさせる。勇み立たせる。
※大智度論平安初期点(850頃か)一四「地より起ちて其の智力を奮(フルヒ)て」
馬上の友(1903)〈国木田独歩〉「勇気を奮(フル)って」
⑤ 残らず出す。全部出し尽くす。すっかりはたき出す。
※栄花(1028‐92頃)浅緑「よろづこの度は我宝ふるひてむと宣はせて」
⑥ 振り動かして払い落とす。
※大慈恩寺三蔵法師伝永久四年点(1116)五「三呉の汗を渾(フル)うて雨を為せりと雖も」
[2] 〘自ワ五(ハ四)〙
勢いが盛んである。気力が盛りあがっている。「商売がふるわない」「成績がふるわない」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉七「肝心の代言事務は頗る振(フル)はざる方なれども」
② ふつうとは違っている。とっぴである。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉三月暦「大仮装行列に至っては、頗る振(フル)ったもので、真に奇想天来のものも少からず」

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