抽・擢(読み)ぬきんでる

精選版 日本国語大辞典 「抽・擢」の意味・読み・例文・類語

ぬきん‐・でる【抽・擢】

(「ぬきいず(抜出)」の変化した語)
[1] 〘他ダ下一〙 ぬきん・づ 〘他ダ下二〙
① 選び出す。よりぬく。抜擢(ばってき)する。
随筆・折たく柴の記(1716頃)上「擢て用ゐられ給ひしかば」
② 抜いて先に出る。追い越す。
※浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一「それがし大勢の御家来の中をぬきんで推参仕る義」
③ 卓越した働きをする。志を人一倍あらわす。
※高野本平家(13C前)五「ひそかに一心の精誠を抽(ヌキン)でて孤嶋の幽祠に詣」
[2] 〘自ダ下一〙 ぬきん・づ 〘自ダ下二〙
① 仲間から抜け出る。とびだす。抜け駆けする。さきがける。
太平記(14C後)一三「心早(はや)き人なりければ、只一人抽(ヌキンデ)て、後の山より何地(いづち)ともなく落給にけり」
※浄瑠璃・平家女護島(1719)二「いかめしげに先走り独りぬきん出何とする」
② 人なみはずれてすぐれる。ひいでる。
※玉塵抄(1563)五「祖逖字は士稚気がぬきんでたぞ」
③ 他よりひときわ高く出る。
帰郷(1948)〈大仏次郎〉花「広い境内に二列の木々が枝をひろげて、花の雲を作り、ぬきんでて高い楼門を、その上に乗せた形である」
[語誌](1)「ぬき(抜)」と「いづ(出)」の複合語「ぬきいづ」から変化して「ぬきんづ」となり、「いづ」から「でる」への変化に並行して「ぬきんでる」となった。
(2)中世軍記物語にみえる形が古いが、その話しことば的な性格からも、撥音便が現われる中古の頃あたりにはすでに使われていたという可能性も考えられる。

ぬきん‐・ず ‥づ【抽・擢】

〘自他ダ下二〙 ⇒ぬきんでる(抽)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android