投込寺(読み)なげこみでら

精選版 日本国語大辞典 「投込寺」の意味・読み・例文・類語

なげこみ‐でら【投込寺】

[1] 行き倒れなど、引き取り手のない死者を大きな一つの穴に投げ入れて葬ることを許されている寺。〔俚言集覧(1797頃)〕
[2] 東京都荒川区南千住二丁目にある浄土宗の寺、浄閑(じょうかん)寺の俗称。新吉原遊女菩提所として知られる。ほかに、浅草道哲西方寺)、上野大音寺などがあった。

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改訂新版 世界大百科事典 「投込寺」の意味・わかりやすい解説

投込寺 (なげこみでら)

江戸吉原の遊女人口は享保年間(1716-36)以降,3000人から4000人を数えるが,階層の低い遊女半数を占めており,こうした遊女は死亡した後も無縁仏として,三ノ輪(みのわ)(現,荒川区南千住2丁目)の浄閑寺や,新鳥越橋南詰(現,台東区浅草7丁目)にあった土手の道哲(どうてつ)(浄土宗西方寺の俗称。現在,豊島区西巣鴨に移転),日本堤の正憶(しようおく)院(現在,足立区大谷田に移転)の山門の中に,なにがしかの銭を添えて投げ込まれた。投込寺という呼称はこうしたことから付けられた。吉原の出入口は大門に限られているが,遊女の死体はそこを通らず,不浄門から踏橋を渡って〈おはぐろ溝(どぶ)〉を越えて廓外へ出た。粗末な棺桶に入れられ,若者2人にかつがれて浄閑寺まで運ばれるが,なかには,むしろに素巻きにされ投げ捨てられた者もあったという。浄閑寺の過去帳には,戒名が〈売女〉〈遊女〉と記された者もあり,現在はこうした無縁仏を一括して吉原総霊塔が建立されている。また江戸四宿飯盛(めしもり)女を埋葬した品川法禅寺,善福寺,海蔵寺,新宿の成覚(じようかく)寺,板橋の文殊院,千住の金蔵院のうち,海蔵寺,成覚寺は投込寺と呼ばれている。
吉原
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