日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦争(北川冬彦の詩集)」の意味・わかりやすい解説
戦争(北川冬彦の詩集)
せんそう
北川冬彦の詩集。『現代の芸術と批評叢書(そうしょ)』第12編として1929年(昭和4)10月、厚生閣書店刊。いわゆる新散文詩運動を提唱した北川の代表詩集であり、いずれの詩も散文体で、強烈な構成意識に貫かれて書かれている。「戦争」「大軍叱咤(しった)」などには当時台頭しつつあった軍部ファシズムへの痛烈な批判があり、一方、「機械」「剃刀(かみそり)」などには感覚の鮮やかな表出があって彼の特性が鋭く出ている。この詩集で北川の昭和新詩における位置は不動のものとなった。
[安藤靖彦]
『『日本の詩歌25 北川冬彦他』(中公文庫)』▽『『北川冬彦自選詩集』(1981・教育出版センター)』▽『桜井勝美著『北川冬彦の世界』(1984・宝文館出版)』