憎・悪・嫉(読み)にくむ

精選版 日本国語大辞典 「憎・悪・嫉」の意味・読み・例文・類語

にく・む【憎・悪・嫉】

〘他マ五(四)〙
① よくないことやよくない人・行為などに対して、感情的、かつ意志的に、強い非難めいた気持を抱く。憎悪する。憎いと思う。
書紀(720)景行一二年一二月(北野本訓)「天皇(すめらみこと)則ち其(そ)不孝(おやにしたかはぬこと)の甚(にへさ)なるを悪(ニクム)て、市乾鹿文(いちふかや)を誅(つみな)ふ」
落窪(10C後)四「いかで我死なん、にくみ、あしき物にの給へば、罪もあらん」
② よくないことなどを嫌い、しりぞける。いとわしく思う。
※大和(947‐957頃)五四「博奕(ばくやう)をして、親にもはらからにもにくまれければ」
③ 他人の長所、幸福、幸運などに対して、ねたましい感情を抱く。ねたむ。そねむ。こしゃくに思う。
源氏(1001‐14頃)桐壺「三位の位おくり給ふよし、勅使来てその宣命読むなん悲しきことなりける〈略〉これにつけてもにくみ給ふ人々多かり」
④ 非難のことばを口にする。悪口を言う。なじる。そしる。
※源氏(1001‐14頃)浮舟「おいぬる人こそ、人はむつかしき心のあるにこそ、とにくむは、めのとやうの人をそしるなめり」
⑤ 相手の意見などに意気ごんで反対する。
徒然草(1331頃)一二「いささか違ふ所もあらん人こそ、我はさやは思ふなどあらそひにくみ、さるからさぞともうち語らはば」
⑥ 軽く、またはからかうような気持でなじる。また、ひやかす。
※源氏(1001‐14頃)帚木「こと人の言はむやうに、心えずおほせらると、中将にくむ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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