恒温変態(読み)こうおんへんたい(英語表記)transformation at constant temperature

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「恒温変態」の意味・わかりやすい解説

恒温変態
こうおんへんたい
transformation at constant temperature

等温変態ともいう。炭素鋼を A3 曲線~ A1 点 (721℃) 以上の温度から一定の温度まで急冷し,ある時間保持すると,一定の時間を経て変態 (結晶格子の変化) が起りはじめ,さらに一定時間後終了する。これを恒温変態といい,変態後の組織は保持する温度によって異なる。この変態の開始,終了の時間を保持温度に対してプロットしたのがTTT曲線で,比較的高温ならば正規の共析組織パーライトになり,中等温度ならばベイナイト,低温ならばマルテンサイトになる。このうちベイナイトは,炭素鋼では 200~500℃の恒温変態によってのみ生じる組織である。炭素鋼以外の合金鋼でも,温度域は異なるがほぼ同様な経過である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「恒温変態」の意味・わかりやすい解説

恒温変態
こうおんへんたい
isothermal transformation

相変化物質の状態変化)の一つの形式で、等温変態ともいう。たとえば、鋼を約900℃に加熱すると面心立方晶になる。次に500~300℃の炉に急ぎ移してこの温度に保つと、暫時潜伏期)を経たのちに変態が始まり、体心立方晶の鉄と炭化物(鉄と炭素の化合物)とが微細に混合した組織になる。この組織はベイナイト組織とよばれ、強さと靭性(じんせい)に優れている。

[西沢泰二]

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