忍返（読み）しのびがえし

精選版 日本国語大辞典

しのび‐がえし ‥がへし【忍返】

〘名〙

① 盗賊などがのりこえて侵入できないように、へいの上などに、とがった竹や木または釘などを打ちつけたもの。〔伊京集（室町）〕

※多聞院日記‐天正七年（1579）一〇月二四日「矢くらのしのひ返出来了」

② 釘抜きの一種。形が花鋏(はなばさみ)のようで大きい。

③ (①に用いる竹に形が似ているところから) 俵の中に挿し込んで米を抜き取るのに用いる米刺(こめさし)の異称。

※雑俳・柳多留‐七〇（1818）「深川へしのびかへしをさした客」

④ 髪形の一種の名。

※滑稽本・街能噂（1835）二「髪の名も夥しくありやすからどれがどふだか分りやせん〈略〉勝山崩、紫若髻、忍返(シノビカヘシ)」

しのび‐かえ・す ‥かへす【忍返】

〘自サ四〙 たえしのんで、苦しみを表面に現わさないようにする。ともすれば、崩れようとする気持を押えて、たえしのぶ。がまんをかさねる。

※源氏（1001‐14頃）宿木「かかる気色をも、見え奉らむと忍び返しつつ」

出典　精選版 日本国語大辞典