府中湊(読み)ふちゆうみなと

日本歴史地名大系 「府中湊」の解説

府中湊
ふちゆうみなと

[現在地名]厳原町国分など

近世に置かれた府中の外港。府中浦・府内ふない湊などともいう。豊臣秀吉による朝鮮出兵では渡海の拠点として重視され、「吉野甚五左衛門覚書」天正二〇年(一五九二)三月一二日条に「対馬のふちうに乗渡し、次第々々に浦つたひ、音に聞へし豊さきの、宇生の浦にてじゆん風を待(中略)たやすく着はかうらいの、釜山浦とぞ聞へける」とある。文禄元年(一五九二)二月壱岐風本かざもと(現勝本町)にいた石川氏・片倉氏・白石氏ら伊達氏の家臣団は日和をみて府中まで船を出している(伊達日記)。同年四月二三日島津氏の軍勢は風本から「対馬国府中」に着岸、同月二八日とぶ(現峰町)から釜山浦に向かっている(「北郷忠虎譜」旧記雑録)。同年五月一九日島津氏の軍勢は「ふちうと申湊」に着船、「千家の町アリ、よろつうつくしき所からナリ」という当地で順風を待って、同月二一日志多賀したか(現峰町)に向かった(「新納忠増日記」同書)。同三年一〇月一四日島津の兵船は風本から対馬府中に至り、一七日鴨瀬かもぜ(現美津島町)を経て二六日泉之いずみの(現上対馬町)から出船して釜山浦に渡海している(「島津家久譜」「新納忠元勲功記」同書)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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