まぼろし【幻】
[1] 〘名〙
① 実在しないものの姿が実在するように見えるもの。また、たちまち消えるはかないもののたとえにいう。
幻影。
※涅槃経集解巻十一平安初期点(850頃)「蠱道し呪ひし幻(マホロシ)し、諸薬を和合し」
※虎明本狂言・塗師(室町末‐近世初)「定てこなたをなつかしう存てまほろしにみえたものじゃと存る」
※宇津保(970‐999頃)楼上上「『さも
まぼろしのやうにも』と聞え給へば、うちほほ笑みて『
蓬莱の山にまかりたりつるや』」
[2] 「
源氏物語」第四一帖の名。第二部の最終巻。光源氏五二歳の正月から年末まで。紫上の
没後の、源氏の
追憶と
悔恨の日々を、四季の変化を背景に、ほぼ一年にわたって描き、
年明けの
出家を暗示して終わる。
[補注]中古の仮名文学で(一)①の意には、「ゆめまぼろし」という
連語での例はあるが、「実在・現実」の意の「
うつつ」に対する「非実在・非現実」を意味する単独の語としては「
おもかげ」「ゆめ」の方が一般的である。
げん【幻】
〘名〙 仏語。空
(くう)の十喩の一つ。一切のものが
因縁によって生じた仮のもので、
実体がなく、空であることをたとえるのに用いる。
※雑談集(1305)一「実には非レ牛、非レ仏。唯是法性の幻(ゲン)(〈注〉マボロシ)也」 〔維摩経略疏‐三〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「幻」の意味・読み・例文・類語
まぼろし【幻】

1 実際にはないのに、あるように見えるもの。また、まもなく消えるはかないもののたとえ。幻影。「死んだ母の幻を見る」「幻のようにはかない人生」
2 その存在さえ疑わしいほど、珍しいもの。「幻の名馬」
3 幻術を行う人。
「たづね行く―もがなつてにても魂のありかをそこと知るべく」〈源・桐壺〉
源氏物語第41巻の巻名。光源氏52歳。紫の上と死別後、その一周忌法要を済ました源氏は、出家の意向を固めて身辺の整理をする。
[類語]幻影・幻視
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
幻
広島県、中尾醸造株式会社の製造する日本酒。リンゴ酵母を使用した吟醸酒タイプ。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報