巻絹(読み)マキギヌ

デジタル大辞泉 「巻絹」の意味・読み・例文・類語

まきぎぬ【巻絹】

謡曲四番目物金春以外の各流。都から熊野巻き絹を運ぶ使者が、途中音無天神で歌を手向けていて遅参すると、天神が巫女みこに乗り移り、使者を許すように言って、神楽かぐらを舞う。

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精選版 日本国語大辞典 「巻絹」の意味・読み・例文・類語

まき‐ぎぬ【巻絹】

[1] 〘名〙 軸に巻きつけた絹の反物。これを賜わったものが腰にはさんで退出するところから、「こしざし」ともいう。
吾妻鏡‐建久四年(1193)一一月二七日「巻絹百。染絹百」
[2] 謡曲。四番目物。観世宝生金剛喜多流。作者不詳。千疋の巻絹を三熊野に納めよという宣旨により、都から熊野に巻絹を持ってきた男は、途中音無の天神で手向けの歌をよんでいたため遅くなり、朝臣から罰せられて縛られる。すると音無の明神巫女(みこ)にのりうつって現われ、朝臣に請うて男のなわを解いてやり、歌の徳などを語り神楽を舞う。

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改訂新版 世界大百科事典 「巻絹」の意味・わかりやすい解説

巻絹 (まきぎぬ)

能の曲名四番目物。作者不明。シテは巫女(みこ)。勅命で1000疋の巻絹が熊野権現に納められることになり,国々から運ばれたものを受け取るために,廷臣(ワキ)が熊野に派遣される。京都からの上納品を携えた男(ツレ)は,熊野に着いてまず音無天神(おとなしのてんじん)に参詣するが,咲き匂う冬梅に目をとめ,一首の和歌を心の中で天神に手向ける。さて巻絹を納めに行くと,期日を過ぎていたので,廷臣の従者(アイ)に縛られてしまう。そこへ巫女(シテ)が現れる。巫女には音無天神が乗り移っていて,昨日の和歌の手向けを喜び,男の縄を解いてくれる。巫女はなお和歌の徳を述べ(〈クセ〉),神前に祝詞(のりと)を捧げ(〈ノット〉),神楽(かぐら)を奏する(〈神楽〉)。そのうちに再び神がかりしたようすで物狂いのていとなるが,時がたつと神霊は離れ去り,平常の女に戻るのだった。

 憑物(つきもの)の能は世阿弥以降しだいに疎外されたようで,この能は貴重な作といえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「巻絹」の意味・わかりやすい解説

巻絹
まきぎぬ

能の曲目。四番目物。五流現行曲。熊野(くまの)へ巻絹を奉納する男(ツレ)が、途中の音無(おとなし)天神に参詣(さんけい)して遅くなったため、監督の勅使(ワキ)に縛られてしまう。天神ののりうつった巫女(みこ)(シテ)が登場し、縄を解くように命ずる。神託を疑う勅使に、巫女は、男が天神に捧(ささ)げた和歌を語って、和歌の徳を説き、激しい神がかりの状態のなかで熊野権現(ごんげん)の神威を示す。祝詞(のっと)をあげ、神楽(かぐら)を舞う、中世の時代相を舞台に映した能。

[増田正造]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「巻絹」の解説

巻絹 (マキギヌ)

植物。クモノスバンダイソウの園芸名

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