差紙・指紙(読み)さしがみ

精選版 日本国語大辞典 「差紙・指紙」の意味・読み・例文・類語

さし‐がみ【差紙・指紙】

〘名〙
① 江戸時代、被疑者、訴訟関係者などを奉行所に呼び出すために発する召喚状。江戸へ在方の者を呼び出すときは、これを江戸宿へ渡し、江戸宿から飛脚伝達した。召喚に応じない者は処罰された。
※俳諧・当世男(1676)秋「雁金や秋はかならず御指紙」
浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中「是の小万に付て代官所のおさし紙」
② 江戸時代、法令を伝達する場合、または尋問すべきことがある場合などに、町村役人の出頭を求めるために発する令状。また、一般的に伝達や命令を伝える文書。
※浄瑠璃・賀古教信七墓廻(1714頃)三「是是指紙(サシガミ)の面、宿送りの流人有、人夫廿人出すべしとの書付」
③ 江戸時代、大坂諸藩の蔵米売却にさいし、米の落札者が米商に渡した米売却の証書。この証書の所持人(米商)は、所定の日限内にこれを掛屋(かけや)に持参し、代金を支払い、出切手(領収書にあたるもの)を受取り、さらにこれを蔵屋敷に持参して現米、または米切手を受け取った。蔵米切手。〔稲の穂(1842‐幕末頃)〕
④ むかし、悪病が流行し、また俗に「狐つき」といわれる病魔に冒されたとき、役所に願って発行してもらう疫神退散の証文。疫神は速かに立ち去るべし、もし立ち去らなければ神罰を蒙る旨が記されていた。
⑤ 江戸時代、江戸の吉原で、遊女屋から遊女揚屋(あげや)へ招く時、客の指名した遊女の名を記して揚屋から持参する紙片揚屋差紙。揚屋手形。〔随筆・吉原雑話(1781‐89頃)〕
⑥ 江戸時代、京坂地方で、新しくかかえた遊女や芸子ひろめの時、その名前、特徴、家名などを短冊形の紙に書いて、かかえ主から茶屋、揚屋などへ配ったもの。
浮世草子傾城禁短気(1711)三「『我々が知らぬ顔の、新しい白人共があらば呼び寄せよ』とて、指紙(サシガミ)僉儀して見し内に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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