さし‐あ・てる【差当】
〘他タ下一〙 さしあ・つ 〘他タ下二〙 (「さし」は
接頭語)
① 直接にあてる。押しあてる。
※
源氏(1001‐14頃)
夕顔「壁の中のきりぎりすだに、
間遠に聞きならひ給へる御耳に、さしあてたるやうに、鳴き乱るるを」
② 命じて、その事にあたらせる。命じて、
任務にあたらせる。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「見つけ給ふ所に、
重役にさしあて給ふ」
③ ねらいをつける。めざしてそれと決める。
※
今昔(1120頃か)一七「弓を取て箭
(や)を番
(つがひ)て強く引て、
持経者の腹に差充てて射るに」
④ ある物と置き換えてみる。ひきくらべる。
※
咄本・軽口露がはなし(1691)四「此女房も
となりの事を身にさしあて、もらひ腹を立」
さし‐あたり【差当】
[1] 〘副〙 (動詞「さしあたる(差当)」の
連用形から)
① 今この場合。現在のところ。さしずめ。
目下。
当面。さしあたって。さしあたりて。
※
有明の別(12C後)三「今の世の
公達(きんだち)はたださしあたり見たてまつるに、かどあり、めやすくこそおはすれ」
※永日小品(1909)〈
夏目漱石〉
山鳥「早速
病院へ入れたのだが、差し当り困るのは金で」
② 緊急に。とっさに。突然。さし迫って。さしあたって。〔
和英語林集成(
初版)(1867)〕
※
野分(1907)〈夏目漱石〉一〇「女は与へられたものを正しいものと考へる。其なかで差し当りのない様に暮らすのを
至善と心得てゐる」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報