日本大百科全書(ニッポニカ) 「嵐山(能)」の意味・わかりやすい解説
嵐山(能)
あらしやま
能の曲目。初番目・脇能物(わきのうもの)。五流現行曲。金春禅鳳(こんぱるぜんぽう)の作。吉野から移植した嵐山の桜を視察にきた勅使がワキ。木守(こもり)、勝手(かって)の吉野の両神が老人夫婦の花守の姿(前シテ、前ツレ)で現れ、太平の世を喜び、花をたたえて去る。両神は後段では後ツレ(子方で演じることも)として本体をみせ、桜の枝をかざして相舞(あいまい)を舞う。後シテの悪魔降伏(ごうぶく)の荒々しい蔵王権現(ざおうごんげん)が出現し、豪快な演技で国土を祝福し、衆生を守る威光を舞い上げる。同じ脇能でも世阿弥(ぜあみ)の『高砂(たかさご)』の凛然(りんぜん)、『老松(おいまつ)』の閑寂な主張とは異なり、ショー的な舞台面の華やかさにねらいがある。にぎやかな猿の婿入りの場面が、大ぜいの狂言方によって挿入される演出もある。
[増田正造]
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