山頂洞(読み)さんちょうどう

改訂新版 世界大百科事典 「山頂洞」の意味・わかりやすい解説

山頂洞 (さんちょうどう)
Upper Cave

中国北京市の南西42km,周口店村の鶏骨山の山頂近くにある後期更新世の洞窟遺跡。ここは周口店遺跡の一部であり,1930年以降に裴文中によって3点の新人化石頭骨を含む数体の人骨が発掘され,山頂洞人(あるいは上洞人)と呼ばれている。101号は壮年男性骨格だが,〈山頂洞の老人〉といわれる。脳頭蓋は大きく,長い。額は広く,鼻は隆起するが,口吻は突出せず,ホモ・サピエンス特徴を示す。四肢骨は長く頑丈で,身長は175cmと推定された。102号と103号は女性とみなされる。頭蓋腔容積(脳容積より10%ほど大きい)は,101号は1500ml,102号は1380ml,103号は1300mlと推定されている。年代は約2万年前といわれるが,はっきりしない。

 かつて,北京原人の研究で著名なワイデンライヒF.Weidenreichは,101号はアイヌに,102号はメラネシア人に,103号はエスキモーイヌイット)に似ていると考え,山頂洞人は各地のアジア人の根幹をなす集団と考えたが,今日では否定されている。山頂洞人は,顔面の彫りが深く,大腿骨の粗線が付柱状に発達しているなどの点では縄文人と似ているが,身長が高く,脳頭蓋が長く,顔面が高い(長い)点では縄文人と異なるので,類縁関係はよくわからない。港川人とは似ている特徴が乏しく,類縁関係は否定的である。なお,山頂洞人の化石は,北京原人の化石とともに,1941年に北京からアメリカに運送しようとした際に失われている。
北京原人
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世界大百科事典(旧版)内の山頂洞の言及

【周口店遺跡】より

…そのうち,原人が使用した地点は,第1地点(猿人洞),70m離れた第15地点,さらに南へ1kmの第13地点の3ヵ所である。また,第1地点の西端から南へ延びた裂隙の山頂部近いところに山頂洞があり,旧石器時代後期,1万8000年前の新人の骨(山頂洞人),石器,骨角器が発見されている。 これらの遺跡群は,1918年にJ.G.アンダーソンが注目して以来,今日に至るまで,解放前においては数多くの欧米の研究者が,解放後1949年以後には中国科学院古脊椎動物・古人類研究所が中心となって発掘調査を進めてきている。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」