伊藤整(せい)の評論集。1947年(昭和22)から48年にかけ『人間』その他に発表。48年河出書房刊。私小説中心の日本の近代小説の性格を、作家と社会、作品と実生活、思想や倫理と芸術性との関係などを軸に、ヨーロッパの小説や生活環境と比較する一方、実作者としての体験を踏まえて、さまざまな角度から考察した論。社会を放棄して狭い文壇のなかで体験を告白しあった私小説家たちと、社会の一員として生きるために仮構を必要とした西洋の作家たちとを、「逃亡奴隷」と「仮面紳士」という対概念でとらえた点がとくに注目された。私小説論、文学原理論として、第二次世界大戦後の名著の一つに数えられる。
[曾根博義]
『『小説の方法』(新潮文庫)』
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