小耳症(読み)しょうじしょう(英語表記)Microtia

六訂版 家庭医学大全科 「小耳症」の解説

小耳症
しょうじしょう
Microtia
(耳の病気)

どんな病気か

 耳介(じかい)が著しく小さい先天奇形で、多くの場合、外耳・中耳の奇形を伴い、難聴を合併することがあります。また、外耳が完全に消失する外耳道閉鎖症(がいじどうへいさしょう)もしばしば伴います(図4)。

 難聴を伴う場合、ほとんどの例で聞こえの神経にはさほどの問題はなく、音を伝える機能に問題がある伝音難聴(でんおんなんちょう)となっています。そのため、手術がうまくいけばある程度聴力の改善がみられる可能性があります。

治療の方法

 治療は耳介を形成する手術を行いますが、時期を含めた慎重な手術計画が必要になります。耳介の形を作るものとして、患者さん自身の肋軟骨(ろくなんこつ)母親など血縁者の肋軟骨シリコンなどがありますが、患者さん自身の肋軟骨が最も良い結果を得ると報告されています。そのため、患者さん自身から十分な大きさの肋軟骨をとることができる10歳前後がベストな手術時期と考えられています。

 また、一般的には10歳前後になると耳介の大きさがほぼ成人の大きさに達するので、正常な側の耳の大きさや形をモデルに小耳症側を形成することができることも、10歳前後に手術する理由のひとつです。

 手術は肋軟骨を採取し耳介の形に細工したものを皮膚の下に埋め込みます。しかし、そのままでは皮膚に余裕がなく、肋軟骨を入れることができません。そこで次の2ついずれかの方法がとられます。

 ひとつは患者さんの大腿部内側から皮膚を移植する方法です。もうひとつは、最近形成外科で頻繁に行われる方法で、ティッシュエキスパンダーという装置で徐々に皮膚を伸ばし、ある程度皮膚に余裕ができるまで約3~6カ月待って、肋軟骨を埋め込む方法です。

 いずれの方法も、手術を数回に分けて行うことになります。

中山 明峰


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改訂新版 世界大百科事典 「小耳症」の意味・わかりやすい解説

小耳症 (しょうじしょう)
microtia

耳介が正常と比べて異常に小さい奇形をいう。耳介が正常の形をしていて,ただ小さいだけということはまれで,ほとんどの場合が形態の著しい変化を伴う。この奇形は耳介の発育異常によるが,同時に外耳道狭窄症あるいは閉鎖症を伴うことが多い。90%以上が両側性に発現する。耳介の発生時期からみると,胎生4~8週ころの障害が関係していると考えられる。この障害の原因としては,妊娠中の母体における投与薬剤(サリドマイド,副腎皮質ホルモン,甲状腺製剤,抗腫瘍剤),感染(風疹麻疹),放射線照射,超音波,高年初産などがあげられている。未熟児に多く,かつ男児に多い。小耳症は通常は家族的な発現をみないが,同一家系に発現することもあり,表現率の非常に低い不完全優性遺伝ではないかという意見もある。奇形の程度により,耳介の各構成部分がかなり識別できるもの(第1度),構成部分の一部が残存しているもの(第2度),単なる皮膚の隆起のみであるもの(第3度),の3段階に分類される。対策としては肋軟骨を利用して耳介の形成術を行う。
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家庭医学館 「小耳症」の解説

しょうじしょう【小耳症 Microtia】

[どんな病気か]
 耳朶(みみたぶ)の小さいのが小耳症で、耳朶の形がふつうよりも小さくて変わっているものから、まったくないものまで、だいたい3から5段階くらいに程度が分けられています。
 生まれつきのもので、外耳道閉鎖症(がいじどうへいさしょう)などに合併する場合がほとんどです。皮下にかたい軟骨のかたまりをもった円形の突出が上のほうにあり、下のほうにやわらかい耳朶のある型がいちばん多いようです。
[治療]
 ある程度十分に耳が発育した8歳から9歳ごろに耳の形をつくる耳介形成術(じかいけいせいじゅつ)を行ないます。
 肋骨(ろっこつ)の内側にあるその人の肋軟骨(ろくなんこつ)を切り出し、これを針金でくくったり、削ったりして、耳枠というものをつくり、これを皮下に挿入して耳らしい外観をつくります。3回くらいに分けて段階的に手術を行ないます。完成までに1年以上かかります。

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世界大百科事典(旧版)内の小耳症の言及

【美作国】より

…旧国名。作州。現在の岡山県北東部。東は播磨,西は備中,南は備前,北は因幡,伯耆の諸国に接し,中世末まで播磨国佐用郡石井(現,兵庫県佐用町石井)を含む。
【古代】
 山陽道に属する上国(《延喜式》)。713年(和銅6)4月,備前国から英多(あいた)(現,英田(あいだ)),勝田(かつた∥かつまた),苫田(とまた),久米(くめ),大庭(おおば),真島(ましま)の6郡を分割して設置された。備前守百済南典,同介上毛野堅身らの申請によるといわれる(《伊呂波字類抄》)。…

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