官有地(読み)かんゆうち

精選版 日本国語大辞典 「官有地」の意味・読み・例文・類語

かんゆう‐ち クヮンイウ‥【官有地】

〘名〙 国家の所有する土地。現在は国有地という。官地
太政官布告第二九一号‐明治六年(1873)八月八日「旧境内は田畑を除之外平地山林共凡て官有地に相定

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改訂新版 世界大百科事典 「官有地」の意味・わかりやすい解説

官有地 (かんゆうち)

民有地にたいして官の所有する地所をいう。1872年(明治5)7月地券の全国一般発行にともない,地券発行の有無地租・区入費賦課の有無により地所の名称を区別する必要が生じ,73年3月に〈地所名称区別〉が制定され,ここではじめて官有地という用語が使用された。しかし,官有地は,皇宮地・神地・官庁地・官用地とならんで,〈各所公園地山林野沢湖沼ノ類旧来無税ノ地ニシテ官簿ニ記載セル地ヲ云〉うと定義され,また村持ちの山林原野などが公有地とされるなど,官有地と民有地に二分するとらえ方はなお明確ではなかった。

 73年6月以降の地租改正実施のなかで,この不明確さが問題となり,74年11月に地所名称区別の改正がおこなわれた。この改正により,いっさいの地所が官有地と民有地に区分されるとともに,さらにそれぞれが地券発行の有無,地租・区入費賦課の有無により分類された。官有地の場合は,第1種〈皇宮地・神地〉,第2種〈皇族賜邸・官用地〉,第3種〈山岳丘陵林藪原野河海湖沼池沢溝渠堤塘道路田畑屋敷等其他民有地ニアラサルモノ・鉄道線路敷地・電信架線柱敷地・灯明台敷地・各所ノ旧跡名区及ヒ公園等民有地ニアラサルモノ・人民所有ノ権理ヲ失セシ土地・民有地ニアラサル堂宇敷地及ヒ墳墓地・行刑場〉,第4種〈寺院大中小学校説教場病院貧院等民有地ニアラサルモノ〉の4種に分けられた。この官民有区分にあたって問題となったのは,従来の公有地の扱いであった。政府は,厳格な基準にもとづき,〈所有ノ確証〉あるものにかぎって民有地とするという方針をとった。その結果,大量の村持ちの山林原野などが官有地に編入されるにいたった。この官有林野は,このあと,89年2月制定の皇室典範にもとづき90年11月までにかけて,約360万町歩(360万ha)が御料林となり,皇室財産の重要部分を構成した。この官民有区分の強行的実施は,入会権をめぐるさまざまな紛議をのちにまで残すことになった。
国有地
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世界大百科事典(旧版)内の官有地の言及

【国有財産】より

…行政財産は,(1)公用財産 国の事務,事業またはその職員の住居に供する財産で,一般庁舎,国立学校・文教施設,防衛施設等からなる,(2)公共用財産 国が直接公用に供する財産で,皇居外苑,新宿御苑,北の丸公園,京都御苑等からなる,(3)皇室用財産 国において皇室の用に供している財産で,皇居,赤坂御用地,京都御所等からなる,(4)企業用財産 国の企業とそれに属する職員の住居に供する財産で,国有林野事業,郵政事業,アルコール専売事業等からなる,の4種に区分される。一方,普通財産とは,行政財産以外の国有財産をいい,原則として特定の行政目的に供されることのない財産であり,財産法,相続税法等の規定により,租税物納として国庫に納付されたもの,明治初期の地租改正で官有地とされたものが含まれる。 国有財産法は,財政法のもとにおいて,不動産分野を担当する法律であるが,社会・経済情勢の変化に伴い,国有財産の用途も多様化してきており,国有財産法のみで律することが困難となっており,特例的規定を盛り込んだ特別法が数多く制定されている。…

※「官有地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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