宇宙の構造と性質(読み)うちゅうのこうぞうとせいしつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宇宙の構造と性質」の意味・わかりやすい解説

宇宙の構造と性質
うちゅうのこうぞうとせいしつ

宇宙重力に支配されているかぎり静的な定常状態にとどまることはできず,収縮するか,あるいは膨張していなくてはならない。観測によれば,宇宙は 137億年前のビッグバンののち膨張を続けている。宇宙に果ては存在しないが,宇宙膨張による赤方偏移と光速度が有限であることによって,われわれから見える最遠の場所(宇宙の地平線)までの距離は 137億光年である。この半径 137億光年の空間には,数千億個の銀河系のような銀河が数十個ないし数千個ずつ集まり,銀河団として散在している。その分布はランダムではなく,さらに数億光年のスケールで連なって網の目状に分布し,宇宙の大規模構造をつくっている。
銀河の一つである銀河系は,直径約 15万光年で,およそ 2000億個の太陽のような恒星を含む。その中心部の星は,宇宙創成の時点から光り続けている第II種族の星である。円盤部の第I種族といわれるものは,宇宙創成時およびその後に生まれた星が超新星となって四散し,それにより重元素が供給されたガスが再び凝集したもので,その多くが連星をなし,あるいは太陽系のような惑星系を従えていると考えられる。銀河系を構成するのは,恒星とその惑星系だけではなく,星間物質と呼ばれる物質がガスまたは宇宙塵として空間を漂い,一部濃くなった部分は星雲と呼ばれて,近くの恒星に照らされて輝き,あるいは恒星や他の星雲の光をさえぎる暗黒星雲として存在を示す。それらのうちには,いずれさらに凝縮して恒星やその惑星系を生み出す途上のものもある。それらを含めた銀河系の主要部分は,渦巻形の構造が重なった円盤状の部分で,太陽のあたりでは約 2億年の周期で回転している。
そのほか,銀河系のまわりの球形の空間(ハロー)に散在している数百個の球状星団がある。球状星団は各 10万個以上の恒星を含む。太陽系は銀河円盤内の,中心から約 2万5000光年離れたところにあり,秒速 200kmで銀河系中心のまわりを公転している。主星の太陽をめぐる 8個の大惑星,数十万個(大部分は小さすぎて地球からは見えない)と推定される小惑星,40個あまりのおもな衛星,それに数不定の彗星がその構成員である。
銀河系の内外を通じ,これらの天体のほかに,巨大なエネルギーを放射し,そのスペクトルに異常に大きな赤方偏移がみられるクエーサー準星),電波や光などの規則正しいパルスを発するパルサー,光学観測による天体と必ずしも一致しない電波源,さらにはブラックホールなど,いろいろな変わり種も発見されている。宇宙の構造を知るためには,銀河全体の 10倍以上の質量をもつ暗黒物質性質と分布を明らかにすることが最大の課題である。

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