子どもの高血圧

六訂版 家庭医学大全科 「子どもの高血圧」の解説

子どもの高血圧
(循環器の病気)

 高血圧成人だけの疾患ではなく、小児にもみられます。残念ながら日本では、十分な疫学的検討がなされていないために小児および青年(18歳未満)の高血圧罹患率の正確な情報はありませんが、0.1~3%程度と推定されています。確立された小児および青年の高血圧診断基準はありませんが、これまでの報告から表4にその目安を示しました。

 小児および青年の高血圧は、成人と同様に大半が本態性高血圧に似た病態と考えられています。とくに小児の場合は二次性高血圧の精密検査を注意深く行う必要があります。小児および青年の二次性高血圧は瘢痕化腎(はんこんかじん)糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)腎血管性高血圧多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)など腎臓に原因がある場合がほとんどです。まれに褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)悪性腫瘍、大動脈縮窄(しゅくさく)に合併するものがあります。二次性高血圧の治療は、成人での治療指針に準じて行われます。

 一般に、小児および青年の高血圧は程度が軽いため、成人に比べて臓器の障害は軽度で大きな合併症も少ないのですが、放置していると成人高血圧に移行することもあります。まずは、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が積極的に行われるべきですが、それでも十分に反応せず血圧が高いままの場合には、薬物療法を開始する必要があります。

 基本的に、降圧薬の選択は成人のものと同じですが、小児では有効な薬剤投与量はしばしば少量であり、体重に応じて投与量が調製されます。

 とくに、現在問題になっているのは小児の肥満が増えていることです。肥満だと、小児の場合も成人と同様に高血圧を合併する頻度が高くなります。肥満是正は高血圧のある小児はもちろんのこと、将来の高血圧発症予防のためにも必要です。

 減塩食や低脂肪食の食事療法に、有酸素運動(速歩き、サイクリング水泳など)を加えた生活習慣の改善が重要です。見過ごされがちですが、危険因子として喫煙の問題も注意が必要です。小児の高血圧は有病率、予後などまだまだ不明な点が多く、今後の検討が待たれます。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報