嫌酒薬(読み)ケンシュヤク

デジタル大辞泉 「嫌酒薬」の意味・読み・例文・類語

けんしゅ‐やく【嫌酒薬】

抗酒剤

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「嫌酒薬」の意味・わかりやすい解説

嫌酒薬
けんしゅやく

酒の嫌いになる薬で、抗酒薬あるいは禁酒薬ともいう。アルコールを解毒する酵素の働きを阻害して苦痛を与え、酒に対する嫌悪感を生じさせて禁酒に導くところから、アルコール依存症の治療に用いられる。ジスルフィラム(「アンタブス」、「ノックビン」)、シアナミドの二つがある。ゴムの製造工場で働く者が、飲酒による吐き気嘔吐(おうと)、脈拍増加など急性アルコール中毒に似る症状を呈したことから、その原因がジスルフィラムであることがわかり、嫌酒薬として治療に用いられるようになった。ジスルフィラムが、アルコールから生じたアセトアルデヒドを分解するアルデヒド酸化酵素を抑制し、体内にアセトアルデヒドが蓄積されて中毒症状をおこすためである。1日100~500ミリグラムを1~3回に分けて内服し、1週間は禁酒する。以後はごく少量の酒を飲んでも激しい酔いが生じ酒を飲めなくなる。高血圧、低血圧、糖尿病のほか、心臓、腎臓(じんぞう)、肝臓に障害のある者には禁忌である。シアナミドはジスルフィラムより作用が弱く反応時間も短い。

[幸保文治]

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世界大百科事典(旧版)内の嫌酒薬の言及

【断酒薬】より

…酒を嫌いにさせる薬で,嫌酒薬ともいう。この薬をあらかじめ投与しておくと,アルコールに対する反応が異常になって不快な症状に苦しむため,慢性アルコール中毒患者が酒をやめたいと望む気持ちを強化してくれる。…

※「嫌酒薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」