太平洋岸気候(読み)たいへいようがんきこう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太平洋岸気候」の意味・わかりやすい解説

太平洋岸気候
たいへいようがんきこう

日本列島を太平洋側と日本海側とに大きく区分したときの太平洋側にみられる気候で,冬季に顕著な差が現れる。太平洋側気候ともいう。日本の気候に最も大きな影響を与えている地形は,北海道と本州を縦断する脊梁山脈である。冬季の季節風はこの山脈にさえぎられて,日本海側に大量の雨と雪を降らせるが,太平洋側の風下側には乾燥した風となって吹き降ろして晴天をもたらす。夏季の季節風も同様の現象を起こすが,冬ほど明瞭ではない。太平洋岸気候は南西諸島,九州,四国,紀伊半島,東海,関東,三陸,北海道東部が該当し,それぞれ特有な気候を示して細分される。この気候の最大の特徴は,冬季乾燥し降水量が少ないことで,年降水量に対する 12月~2月の 3ヵ月の降水量の割合は,釧路 11%,宮古 13%,東京 10%,潮岬 12%,高知 8%,鹿児島 11%。これに対して日本海岸気候では高田 40%,敦賀 33%,鳥取 28%。太平洋側では冬に根雪となることはほとんどなく,雪は 2月か 3月に太平洋側を通過する低気圧によってわずかに降る場合が多い。暖候期は全般的に雨が多く,月別にみると降水量の極大は梅雨期と台風期。特に東海,紀伊半島,九州の山岳地帯の南斜面は,日本の最多雨地域となっている。冬季の快晴および晴の日数は,日本海側の月平均 5日前後に対して,太平洋側では 15日前後。気温は一般に温和であり,九州や四国の太平洋沿岸地域では年平均気温で 15℃をこえるが,関東内陸部では 12~15℃,北海道東部では 3~6℃。冬は北日本では日本海側よりも太平洋側のほうが寒冷となる。北海道東部では夏にの発生が多い。恵まれた気候条件のため,九州や紀伊半島の山地には美林がよく育ち,イネ高知平野の二期作をはじめ全地域でつくられ,また柑橋類,ビワモモイチゴチャ(茶),野菜など多角的な農業が営まれている。

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