大山(鳥取県)(読み)だいせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大山(鳥取県)」の意味・わかりやすい解説

大山(鳥取県)
だいせん

鳥取県西部にある複式火山。三角点のある主峰弥山(みせん)は標高1710.6メートルであるが、最高点の剣ヶ峰(けんがみね)は1729メートルで中国地方の最高峰。『出雲国風土記(いずものくにふどき)』の国引(くにび)きの神話では「大神岳(おおかみのだけ)」と記される。

 古期と新期の火山体のうち、古期大山は更新世(洪積世)の中期末までにできた成層火山で、古期火山砕屑(さいせつ)岩を基層とする東西37キロメートル、南北30キロメートルの裾野(すその)と、船上山(せんじょうさん)などの石英安山岩質溶岩に覆われた東部大山とからなる。新期大山は、確証を欠くが、成層火山の中央部にできたカルデラ内に噴出した弥山などの大円頂丘群(鐘状火山)と、鍔抜山(つばぬきやま)(705メートル)、鈑戸山(たたらどやま)、豪円山(ごうえんざん)などの寄生火山、新期の火砕流堆積(たいせき)物や火山灰軽石などからなる。後者は古期大山の裾野の侵食谷を埋め、西半部には平坦(へいたん)面を示す成(なる)や原のつく地名が多い。この間の爆発は、C‐14の測定値で約4万8000年、1万8000年前後以前と推定されている。山容は変化に富み、西方からは伯耆富士(ほうきふじ)、北方、南方からは北壁(きたかべ)、南壁(みなみかべ)とよばれる急崖(きゅうがい)、東方からは峨々(がが)たる壮年期の山形に変わる。大山寺のある標高765メートルの地の年平均気温は10.5℃、年降水量3635ミリメートル、冬期は最深積雪量247センチメートルに及び、西日本最大のスキー場となる。

 生物相も気候の垂直的変化とともに変化する。大山寺以下では、暖帯二次林のアカマツ、クロマツや、キマダラルリツバメが注目され、約700~1350メートルの間では温帯落葉広葉樹林帯となり、日本海沿岸のブナ林分布の西限をなし、低木には日本海沿岸系のハイイヌガヤや、太平洋沿岸系のクロモジなども分布し、ゴジュウカラキビタキムササビヤマネなども生息する。約1400メートル以高では、亜寒帯の針葉樹林帯を欠いたまま低木草本帯となり、1600メートル付近には特別天然記念物で県木のダイセンキャラボクの純林(南北320メートル、東西110メートル)があり、貝類のダイセンニシキマイマイやホシガラスが生息する。また234種の野鳥がおり、昆虫では寒地系エゾゼミから暖地系オバホタルまで多様である。大山集落から弥山までの約2時間の行程が一般的な登山コース。

[岩永 實]


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