大回・大廻(読み)おおまわし

精選版 日本国語大辞典 「大回・大廻」の意味・読み・例文・類語

おお‐まわし おほまはし【大回・大廻】

〘名〙
① 遠くへだてた目的地へ航海すること。また、その船。江戸時代ではだいたい一〇〇里(約四〇〇キロメートル)以上の航程を、途中の寄港を少なくして目的地へ直航する航海をいい、一般には五〇〇石積以上の船が使われた。大回り。
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)一「おおまわしの船に便船して浦々の名所名所を尋ねとひ」
連歌俳諧で、最後の五文字が最初の五文字に接続した、意味の切れ目のない作り方。
※俳諧・天満千句(1676)九「一順箱夕べの月の大まはし〈西鬼〉 諷のふしをきいた虫の音〈西花〉」
③ 腕などを大きく回すこと。
ロマネスク(1934)〈太宰治〉嘘の三郎左手をうしろから大廻しにゆっくり廻して」
④ 大ざっぱに、それとなく言ったりしたりすること。遠まわし。
消息(1899‐1900)〈正岡子規〉「表面よりいひても分りたる事をわざと大まはしに謎句にいふが」
洒落本・玉之帳(1789‐1801頃)三「猪牙檜垣を大廻しにのっきるとき」

おお‐まわり おほまはり【大回・大廻】

〘名〙
① 大きな円を描いて回ること。
② 道を行くのに、近い道を通らないで遠くを通って行くこと。遠回り迂回
※浮世草子・椀久二世(1691)下「松屋町筋に大まはりするこそおかしけれ」
③ 能または歌舞伎で、役者が舞台を大きく一回りすること。
④ 歌舞伎の立ち回りの一つ。主役を中心に大勢がその周囲を大きく回ること。
※劇場新話(1804‐09頃)上「殺陣名目 一千鳥 一大廻り」
⑤ 拝堂・社参・回峰等の行を、広い範囲で勤めること。比叡山回峰行における京都大廻りは有名。
※維摩会竪義日記(1589)「六月廿六日に加行始畢。社参、大廻、子守漢国、観禅院滝蔵迄、参詣畢」
⑥ 取引所での株式売買の方法。すべての銘柄について第一回の立会を行ない、一回り終わったあと、また、はじめから第二回目、第三回目の立会を行ない、最終の値段を決定すること。〔取引所用語字彙(1917)〕
元居書抜徳島藩)‐安宅・貞享三年(1686)一〇月一三日「江戸大廻り被遣節は船足四寸」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android