夜鳴(啼)饂飩(読み)よなきうどん

改訂新版 世界大百科事典 「夜鳴(啼)饂飩」の意味・わかりやすい解説

夜鳴(啼)饂飩 (よなきうどん)

夜間街頭を流し歩くそば・うどん売。江戸末期に京坂地方ではうどん専門,江戸ではそばを主としうどんも兼ねたが,夜鳴きうどんは京坂地方の呼名で,江戸ではむしろ夜鷹そばと称し,街娼がいしよう)の夜鷹が多くこれを食べるからと説明されていた。江戸の夜そば売は,担ぎ屋台にかならず風鈴をつるすならわしであり,京坂地方でもこれにならうものがあった。夜そば売は市民に親しい存在であり,とくに秋冬の夜の添景として,芝居その他のものにも広く取材された。明治時代以後もそれは続いてきたが,近年はむしろ中華そばが主となり,チャルメラがかつての呼声にかわった。
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世界大百科事典(旧版)内の夜鳴(啼)饂飩の言及

【うどん(饂飩)】より

…小麦粉でつくるめん類の一種。名称は奈良時代に中国から渡来した唐菓子の餛飩(こんとん)からの転化で,いつの間にか饂飩,温飩と書かれ,〈うんどん〉〈うどん〉と呼ばれるようになったが,中身は別物である。近世に饂飩といったのは中国の切麵(せつめん)で,日本の切麦(きりむぎ)にあたる。切麦はうどんより細く切るのが特徴で,熱くしたものを熱麦(あつむぎ),冷やしたものを冷や麦といい,そうめんと同じく点心のほか饗膳(きようぜん)の後段(ごだん)にも供された。…

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