デジタル大辞泉
「夏草の」の意味・読み・例文・類語
なつくさ‐の【夏草の】
[枕]
1 夏草の生い茂る野の意から、「野」を含む地名「野島」に掛かる。
「―野島が崎に舟近付きぬ」〈新拾遺・羇旅〉
2 夏草が日に照らされてしなえる意から、「思ひ萎ゆ」に掛かる。
「―思ひ萎えて嘆くらむ」〈万・一三八〉
3 夏草が繁茂するところから、「繁し」「深し」に掛かる。
「―繁き思ひは」〈新勅撰・恋二〉
4 夏草を刈る意から、「刈る」と同意を含む「仮」「仮初」に掛かる。
「―仮初にとて来しかども」〈能因集〉
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なつくさ‐の【夏草の】
枕
① 地名「あひね」にかかる。「あひね」の所在およびかかり方未詳。
一説に、夏の草が萎
(な)えるの意で「ね」にかかるとも。
※
古事記(712)下・
歌謡「那都久佐能
(ナツクサノ) あひねの浜の 蠣貝
(かきがひ)に 足踏ますな 明かして通れ」
② 夏草の生えている野の意で、「野」を含む地名「野島」や「
野沢」にかかる。
※
万葉(8C後)三・二五〇「玉藻刈る敏馬
(みぬめ)を過ぎて夏草之
(なつくさの)野島の埼に舟近づきぬ」
③ 夏の草が日に照らされてしなえる意で、「思ひしなゆ」にかかる。
※万葉(8C後)二・一三一「夏草之(なつくさの) 思ひしなえて しのふらむ 妹が門見む 靡け此の山」
④ 夏の草が繁茂するところから、「繁し」「深し」にかかる。
※班子女王歌合(893頃)「なつくさのしげき思ひは
蚊遣火のしたにのみこそ燃えわたりけれ」
※続
拾遺(1278)夏・一九八「夏草の深き思ひもある物をおのればかりと飛ぶ蛍かな〈土御門院〉」
⑤ 夏草を刈る意で、「刈る」と同音を含む「仮」「仮初(かりそめ)」に続く。
※
古今六帖(976‐987頃)六「なつくさの仮のよひとはわびしくも我に秋風吹き初めつるか」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報