壺中の天(読み)こちゅうのてん

精選版 日本国語大辞典 「壺中の天」の意味・読み・例文・類語

こちゅう【壺中】 の 天(てん)

本朝文粋(1060頃)一一・修竹冬青詩序〈藤原篤茂〉「壺中之天欲曙、象外之楽豈荒」 〔白居易‐酬呉七見寄詩〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「壺中の天」の意味・わかりやすい解説

壺中の天
こちゅうのてん

俗世間とは異なった別天地、別世界のこと。「壺(つぼ)の中の世界」の意で、転じて、酒を飲んでこの世の憂さを忘れる楽しみをいう。

 中国、後漢(ごかん)の費長房(ひちょうぼう)がかつて市の役人をしていたとき、薬売りの老人が店をしまうと、店先に掛けておいた壺の中に跳び入るのを、だれ1人気づかなかったが、費長房ははるかに楼上からこれを見、老人に頼み込んで壺の中に入れてもらったところ、中にはりっぱな建物が建ち並び、美酒佳肴(かこう)がいっぱいあり、費長房は、老人とともに歓を尽くしたと伝える、『後漢書(ごかんじょ)』「方術伝」の故事による。

[田所義行]

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