反転テクトニクス(読み)はんてんてくとにくす(英語表記)inversion tectonics

日本大百科全書(ニッポニカ) 「反転テクトニクス」の意味・わかりやすい解説

反転テクトニクス
はんてんてくとにくす
inversion tectonics

すでに存在している断層が従来とは正反対の動きをする造構運動をいう。正断層が卓越する伸張テクトニクス(地層が水平方向に引き伸ばされる造構運動)のもとで地層が堆積(たいせき)した後、短縮テクトニクス(地層が水平方向に押し縮められる造構運動)の状況になり、正断層として活動していた断層面を利用して、逆断層衝上断層)として活動することがある。このような正反対となる変化を表す造構運動を反転テクトニクス、あるいはインバージョン・テクトニクスという。伸張テクトニクスのもとで形成される正断層は、地表付近では高角でも地下では水平に近くなっていることが推定されており、この水平な部分が応力場の変化で反対向きに衝上断層として再活動すると考えられている。これとは逆に、衝上断層が卓越していた地域が、後で正断層の発達する地域に変化することもあり、これも反転テクトニクスの造構運動になる。前者の場合は「正の反転」、後者の場合は「負の反転」として区別される。

 東北日本の日本海側では、新第三紀に伸張テクトニクスの影響下で地層が堆積した後、少なくとも第四紀には衝上断層(逆断層)運動が生じて反転しており、いくつかの活断層は、このようなものであることが示されている。横ずれ断層でも、左横ずれ断層であった断層が、後で右横ずれ断層として動いている例が知られており、これも反転テクトニクスの例である。たとえば、四国中央構造線は、白亜紀最後期や古第三紀には左横ずれであったことが知られているが、少なくとも第四紀には逆にずれており、中央構造線活断層系としては右横ずれとなっている。

[村田明広]

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