原温泉(読み)さかきばらおんせん

日本歴史地名大系 「原温泉」の解説

原温泉
さかきばらおんせん

[現在地名]久居市榊原町中ノ村

榊原川が貝石かいせき(一二〇メートル)根元を洗って流れる辺りの河原から湧出する摂氏三五度の弱アルカリ性単純硫化水素泉。この地が七栗ななくり郷に属するところから、古来「七栗の湯」と称された。「枕草子」にある「湯はななくりの湯、ありまの湯、云々」の文は同書諸本のうち、堺本のみにみられるもので後世竄入のおそれがあるが、「夫木抄」に収められる次の贈答歌は、この温泉の名が早く平安朝から都にまで響いていたことを物語る。

資料は省略されています>

この頃から「七栗の湯」は歌枕として、または「湧く」にかかる枕詞としてしばしば和歌に登場する。

<資料は省略されています>

しかし「七栗の湯」は歌学書では所在を信濃とするものもある。また実際にこの地を訪れて歌を詠んだのは戦国時代北畠国司家の一族国永で、彼はしばらく滞在し、現地の風物を二五首残しており、「十月計りに、榊原湯治の為に趣き侍りしに」の詞を付した和歌もある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報