千光寺(広島県)(読み)せんこうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「千光寺(広島県)」の意味・わかりやすい解説

千光寺(広島県)
せんこうじ

広島県尾道(おのみち)市東土堂町、大宝山(たいほうざん)の中腹にある真言(しんごん)宗系の単立寺院。大宝山権現院(ごんげんいん)と号する。本尊千手(せんじゅ)観世音菩薩(ぼさつ)で、火伏せの観音(かんのん)として親しまれている。806年(大同1)の創建と伝えられ、多田満仲(ただのみつなか)が中興したという。現在の丹(に)塗りの本堂、毘沙門(びしゃもん)堂、護摩堂などは江戸中期以後のもので、断崖(だんがい)上に建っている。一帯は千光寺公園とよばれ桜の名所でもある。境内には当寺を詠んだ頼山陽(らいさんよう)、林芙美子(ふみこ)、正岡子規などの文学碑があり、文学の小道として名高い。またかつては宝珠が輝いていたという烏帽子(えぼし)岩があり、その伝説は志賀直哉(なおや)の『暗夜行路』に記されている。

[眞柴弘宗]


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