剣舞(けんばい)(読み)けんばい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「剣舞(けんばい)」の意味・わかりやすい解説

剣舞(けんばい)
けんばい

東北地方の新仏供養の念仏踊。けんばいの語源については足踏みによる悪霊払いの反閇(へんばい)から出たとする説があり、鎮魂の方式と考えられる。土地によっては鬼剣舞、念仏剣舞、雛(ひな)剣舞といい、盆や秋祭りに出て家々を巡り、祖先の供養に、また悪魔払いに踊る。鬼剣舞は、高館物怪(たかだてもっけ)、阿修羅(あしゅら)踊などともよばれ、平泉の高館に没した源氏の武士たち亡霊をかたどるといわれる。鬼面をつけ、剣を手に、南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)の口拍子と、笛、太鼓、銅鈸子(どびょうし)につれて活発に踊る。大きい花笠(はながさ)も出、踊り子は面をつけず、長刀や太刀(たち)や棒を持って踊る念仏剣舞も、跳躍の激しい踊りである。たとえば、岩手県紫波(しわ)郡紫波町犬吠森(いぬぼえもり)では弥陀(みだ)の浄土の象徴である大笠を中心に、「入羽(いりは)」「中羽(なかは)」「引羽(ひきは)」の3曲を演じる。踊り子は饅頭笠(まんじゅうがさ)をかぶり、簓(ささら)、鉦(かね)、ふくべ、扇、唐団扇(とううちわ)を持って踊る。花錫杖(しゃくじょう)を持つ少女たちの雛剣舞は華麗なものである。

[萩原秀三郎]


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