六十種曲(読み)ろくじっしゅきょく(英語表記)Liù shí zhǒng qǔ

改訂新版 世界大百科事典 「六十種曲」の意味・わかりやすい解説

六十種曲 (ろくじっしゅきょく)
Liù shí zhǒng qǔ

中国,明末常熟の毛晋(1599-1659)が編集し刊行した戯曲選集。60種の作品を収め,元の雑劇西廂記》のほかは,すべて明代の戯文である。毛晋はその汲古閣に膨大な書籍を蔵したが,その中から枢要な書を選んで復刻し,天下に流布させた人である。《六十種曲》は《十三経注疏》《十七史》《津逮秘書》などとともに,毛晋の名を不朽に伝えている。万暦年間(1573-1619)には臧懋循(ぞうぼうじゆん)の《元曲選》をはじめ,元曲の選集が幾種か出版されていたが,毛晋はこれに対応し,明の戯文の価値を称揚すべく,この選集を刊行したと考えられる。元末・明初の高明の《琵琶記》や,万暦年間の最高傑作とされる湯顕祖の《牡丹亭》はもとより,佳作はほぼ網羅されている。またこの選集におさめられることによって,今日に伝わり得た作品もあり,明代の戯文の様相,歴史的発展の跡をたどるうえで,きわめて重要な資料である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六十種曲」の意味・わかりやすい解説

六十種曲
ろくじっしゅきょく
Liu-shi-zhong-qu

中国,明代戯曲の作品集。編者未詳。明末の毛晋 (1599~1659) の刊行。明初以来流行した南方系の戯曲,いわゆる南曲の作品 60種を収めたもの。『琵琶記』をはじめ『荊釵 (けいさ) 記』『還魂記』『南柯記』など南曲の代表作が収められ,明代戯曲を研究するうえで最も基本的な資料。

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