日本大百科全書(ニッポニカ) 「入札(にゅうさつ)」の意味・わかりやすい解説
入札(にゅうさつ)
にゅうさつ
a written bid
競争売買(1人対多数の交渉による売買取引)の一方法。買い手が1人のとき2人以上の売り手が各自の最低販売値段を書面で申し込むか、売り手が1人のとき2人以上の買い手が各自の最高購入値段を書面で申し込む方法が入札であり、前者の場合はすべてのなかで最低販売値段を申し込んだ者が売り手に、後者の場合はすべてのなかで最高値段を申し込んだ者が買い手に決定する。この決定者を落札者という。あらかじめ入札者に一定の資格を課して制限する場合(指定入札)と、公募する場合(公告入札)とがある。また、落札決定基準として値段についてあらかじめ最高または最低の金額を指定しておく場合(指値(さしね)入札)と、指定しない場合とがある。入札売買は多数者が書面によって競争的に値段を表示するので、相対(あいたい)売買(売り手と買い手の2人の交渉による売買)に比べて公正かつ合理的である。このため、官庁や企業が多額の物資を購入したり払い下げるとき、工事の請負をさせるときなどは、入札が原則となっている。一般に行われる入札の手続は、公告、予定価格(指値)の決定、入札保証金の納付、入札、開札からなっている。指値入札が行われる理由は、売買契約の履行に際して、工事・製造・品質・数量に不正を生み出すような不当な値段を入札させないようにするためである。公の入札の際、偽計もしくは威力を用いて公正を害する行為をすると、入札妨害罪もしくは談合罪(刑法96条の3)になる。なお、入札に似た競争売買に競売(けいばい)があるが、口頭で買い受けを申し込む点で入札と異なる。
[森本三男]