兆・萌(読み)きざす

精選版 日本国語大辞典 「兆・萌」の意味・読み・例文・類語

き‐ざ・す【兆・萌】

[1] 〘自サ五(四)〙 (「気差す」の意)
草木が芽を出す。芽ぐむ。もえ出る。
曾丹集(11C初か)「かたをかの雪間(ゆきま)にきさす若草のはつかに見えし人ぞ恋しき」
徒然草(1331頃)一五五「木の葉のおつるも、〈略〉下よりきざしつはるに堪へずして落つるなり」
物事が起ころうとする。また、心の中に、ある種の気持、考えなどが生ずる。
落窪(10C後)四「人がらもいとよき人也とおぼしきざして」
愚管抄(1220)二「大乱逆きざしてけるにや」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉考古学士の家「曩にはその心に初恋の充牣(きざ)したるため、些の余地だになかりき」
③ 特に、色情が起こる。
※浮世草子・好色訓蒙図彙(1686)下「女猶きざす也」
[2] 〘他サ五(四)〙 病気などある状態を起こし始める。また、ある考え、気持などを持ち始める。ある考えをはぐくみはじめる。
※愚管抄(1220)七「事をばきざして四十にてうせおはします事ぞおぼつかなけれど」
小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「邪淫の心を起せるもの若くは悪意を萌(キザ)せる者は」

き‐ざし【兆・萌】

〘名〙 (動詞「きざす(兆)」の連用形名詞化)
① 草木の芽が今にも出そうになること。芽ばえ。芽出し
※御巫本日本紀私記(1428)神代上「含牙〈岐左之(キサシ)乎不久女利〉」
※俳諧・山下水(1672)春下「大木にならん木さしやちご桜〈笑種〉」
② 物事の起ころうとするしるし。兆候前兆
書紀(720)皇極四年六月「入鹿を戮さむと謀れる兆(キザシ)なり」
史記抄(1477)五「是が坑儒焚書のきさしは、はや此からあったぞ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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