保存鉄道(読み)ほぞんてつどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「保存鉄道」の意味・わかりやすい解説

保存鉄道
ほぞんてつどう

産業遺産保護などの目的で鉄道車両や施設を保存すること。また保存された鉄道をいう。厳密には車両運転設備の操作が可能な動態保存をさす。保存鉄道の歴史は、1951年にイギリスのタリスリン鉄道が廃止された際に、保存会が組織され、鉄道を買い取り、運転を継続したことに始まる。その後欧米各地に広まったが、その運営の中心は市民または市民団体が多い。日本では、鉄道企業や地方自治体による車両などの静態保存は行われているが、動態保存は、とくに費用の問題からその実行は困難である。現存する線路を使い、集客を目的とした蒸気列車の運転列はあるが、保存鉄道という場合には、輸送の効果を求める企業の論理ではなく、文化財として施設・車両を評価する立場にたつべきである。最近は、鉄道を文化財の一つとして評価する動きがおこり、保存鉄道に対する関心が高まり始めている。

原田勝正

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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