伊羅保茶碗(読み)いらぼちゃわん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊羅保茶碗」の意味・わかりやすい解説

伊羅保茶碗
いらぼちゃわん

李(り)朝時代の朝鮮半島でつくられた高麗(こうらい)茶碗一種。日本の侘(わび)の茶の湯で用いられる茶碗の一つである高麗茶碗としては、茶人が注文して焼造させるようになる桃山、江戸前期の茶碗に属する。陶胎、椀(わん)形の大形茶碗で、総体に薄く成形され、小砂混じりの素地(きじ)に青黄色の釉(うわぐすり)があたかもいらいらするような景色を呈するところからこの名がある。その作風から、古伊羅保、千種(ちぐさ)伊羅保、片身替(かたみがわり)伊羅保、釘彫(くぎぼり)伊羅保、黄(き)伊羅保などに分類され、千種、片身替、釘彫がとくに喜ばれている。窯(かま)は韓国の東莱(とうらい)(釜山(ふざん)広域市)の近くにあることが判明している。

[矢部良明]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伊羅保茶碗」の意味・わかりやすい解説

伊羅保茶碗
いらぼぢゃわん

高麗茶碗の一種。素地 (きじ) に鉄分の多いあらい土を使い,ろくろ目の目立った跡に小砂が火にはぜて釉 (うわぐすり) が荒れているため,手ざわりが「いらいら」「いぼいぼ」するところから,日本でこの名がつけられたという。千種 (ちぐさ) ,片身替り,釘彫,黄・黒伊羅保などの種類がある。各所に作為的な仕上げが目立つので,江戸時代初期にもっぱら佗茶用に日本から注文して作らせたものが多いとみられる。その産地は慶尚南道地方と推定されている。

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