仏の舞(読み)ほとけのまい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「仏の舞」の意味・わかりやすい解説

仏の舞
ほとけのまい

阿弥陀(あみだ)、釈迦(しゃか)、大日(だいにち)、薬師(やくし)などの如来(にょらい)像に扮(ふん)して演じる民俗芸能。全国にかなり広く分布し、京都府舞鶴(まいづる)市の松尾寺の六体仏、福井市の糸崎観音(かんのん)堂の八仏二菩薩(ぼさつ)、和歌山県かつらぎ町の遍照寺の五仏一菩薩、島根県隠岐(おき)の島町の隠岐国分寺の蓮華会舞(れんげえまい)(舞楽(ぶがく))の「仏舞(ほとけまい)」、秋田県鹿角(かづの)市の大日堂(だいにちどう)舞楽の「五大尊舞(ごだいそんまい)」などがあげられる。松尾寺では一の釈迦、二の釈迦、一の大日、二の大日、一の阿弥陀、二の阿弥陀が腰鼓(ようこ)を打って静かに舞う。遍照寺では釈迦、阿弥陀、大日、薬師、阿閦(あしゅく)の五仏と文珠(もんじゅ)菩薩が出て女人成仏を劇的に演じてみせる。これらは延年(えんねん)芸能として舞楽の舞振りを取り込んだり、劇構成の延年風流(ふりゅう)に倣ったもののようである。隠岐の仏舞は元来菩薩で、舞楽の供養舞との関係がうかがわれるが、二十五菩薩が来迎して引接するという来迎会(らいごうえ)(迎講(むかえこう)、練供養(ねりくよう)とも)も奈良県葛城(かつらぎ)市の當麻(たいま)寺などで行われており、阿弥陀仏が観音・勢至(せいし)などの菩薩を従えて死者極楽浄土に導くという信仰を行道(ぎょうどう)風に仕組んでいる。千葉県横芝光町の鬼来迎(きらいごう)も地蔵菩薩の亡者救済劇であるが、広義の仏の舞とみることができる。

[西角井正大]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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