交通事故(読み)こうつうじこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「交通事故」の意味・わかりやすい解説

交通事故
こうつうじこ

交通手段(自動車鉄道船舶、航空機など)の運転・操縦においていろいろな要因により異常をきたし、人命死傷、物の損害を引きおこす事態をいう。交通事故は、交通手段別に道路交通事故(自動車事故)、鉄軌道交通事故(鉄道事故)、海上交通事故(海難)、航空交通事故(航空事故)に大別される。日本における交通事故による死傷者統計を、種類ごとに年代を追って比較してみる。道路交通事故65万3582人(1984)、105万9403人(1999)、91万5029人(2009)、58万4544人(2017)。鉄軌道交通事故1538人(1984)、689人(1999)、683人(2009)、561人(2017)。海上交通事故(死者・行方不明者)252人(1984)、146人(1999)、142人(2009)、54人(2017)。航空交通事故(民間機のみ)46人(1984)、26人(1999)、9人(2009)、28人(2017)。これらの推移から、数は減っているものの依然として道路交通事故による死傷者が多いといえる。道路交通事故の増加は、高度経済成長期における急激なモータリゼーションの発達と自動車台数の増加、自動車価格の低下と所得水準の上昇による所有率増加などによるところが大きい。

 1970年代以降、交通手段の大型化、多機能化、高速化が進んだことから、いったん事故が発生すると一挙に大量の人命や財貨を奪う大型事故となる可能性が高い。交通手段の技術的発展が人間社会に恩恵を与える反面、交通事故が国民生活の根底を脅かすという矛盾を生み、現代の「社会不安」の一つとなっている。また、これらの事故を未然に防止する交通安全対策が運輸・交通行政の重要な課題の一つとなっている。

[松尾光芳・藤井秀登]

『F・H・ホーキンズ著、石川好美監訳『ヒューマン・ファクター 航空の分野を中心として』(1992・成山堂書店)』『D・ゲロー著、清水保俊訳『航空事故』増改訂版(1997・イカロス出版)』『安部誠治監修、鉄道安全推進会議編『鉄道事故の再発防止を求めて』(1998・日本経済評論社)』『山之内秀一郎著『なぜ起こる鉄道事故』(2000・東京新聞出版局)』『青木勝治著『交通事故とPTSD』(2000・文芸社/朝日文庫)』『交通法科学研究会編『科学的交通事故調査』(2001・日本評論社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「交通事故」の意味・わかりやすい解説

交通事故
こうつうじこ
traffic accident

交通機関の運行上のなんらかの異常により損害が発生する事故。鉄道事故も含めた陸上交通事故のみならず,海難航空事故なども含まれるが,一般には道路での自動車,自転車,歩行者の事故をいう。自動車事故を主因とする交通事故の増加は大きな社会問題となり,刑法道路交通法も事故の抑止のため,人身損害や物損事故に対する刑罰を厳重に規定している。なお自動車による人身事故に対して被害者の保護をはかるため,自動車損害賠償保障法により強制責任保険制度がとられている。日本では,自動車の普及に伴い事故も激増し,交通事故での死者数は 1969~70年にピークに達したが,以後は減少を続け,1980年代後半から 1990年代前半にかけていったん増加したが,以降は再び減少に転じている。しかし,近年は下げ止まりの傾向にあり,特徴としては,高齢者の事故の増加,歩行者の死亡事故の増加などがあげられる。2013年に発生した交通事故は 62万9021件で,これによる死者は 4373人,負傷者は 78万1494人である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「交通事故」の意味・わかりやすい解説

交通事故【こうつうじこ】

交通機関の事故で人畜の死傷,財貨の損害をもたらすもの。鉄道・軌道の事故(鉄道事故),道路交通事故,海難航空事故に大別される。全般的に交通機関の高速化・大型化が進むとともに,いったん事故が発生すると大量の人命を奪う大事故となる傾向を示し,また,自動車事故の激増が主原因となって道路交通事故が件数,犠牲者とも圧倒的比重を占めている。道路交通事故は,2003年には94万7993件,死者7702人,負傷者118万1431人に達し,死亡事故のほとんどは自動車事故で占められている。→交通事故傷害保険
→関連項目交通違反

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

精選版 日本国語大辞典 「交通事故」の意味・読み・例文・類語

こうつう‐じこ カウツウ‥【交通事故】

〘名〙
① 交通機関の故障や運転の誤りなどによって起こる脱線、衝突、沈没、墜落などの事故。
※弔花(1935)〈豊田三郎〉「スキーで遭難する人間と、交通事故で斃(たふ)れる人数のパーセンテージを取って見れば」
② 自動車などによる人間の死傷や物の破損などの災害交通禍
※マイク余談(1947)〈藤倉修一〉街頭録音一「黒山の人だかりであるといえば、スリか、交通事故か、宝くじか、でなければ東京名物の街頭録音である」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「交通事故」の意味・読み・例文・類語

こうつう‐じこ〔カウツウ‐〕【交通事故】

交通機関に関する事故。鉄道・自動車・航空機・船舶などの事故と、それによる人・物件などの災害。主に自動車による事故や災害をいう。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版 「交通事故」の意味・わかりやすい解説

こうつうじこ【交通事故】

広義にはすべての交通に伴う人的・物的損害または往来の危険の発生をいうが,ここでは狭義の交通事故,すなわち道路交通事故についてのべる(他については〈鉄道事故〉〈海難〉〈航空事故〉の項を参照)。 道路交通事故は自動車・原動機付自転車,軽車両もしくはトロリーバスまたは路面電車(以下〈車両等〉という)の交通による人の死傷または物の損壊をさす(道路交通法72条1項)。すなわち車両等の交通により惹起されたものであることを要し,歩行者相互あるいは道路で遊戯中の幼児の転倒によるものなどは含まない。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

世界大百科事典内の交通事故の言及

【交通違反】より

…その多くに対しては,同法第8章に罰則が定められている。事故(人の死傷・物の損壊)を伴う場合には,人身事故のときは業務上過失致死傷罪(刑法211条前段),建造物に対する物損事故のときは業務上過失建造物損壊罪(道路交通法116条)にもあたることが多いが,この場合を単純な交通違反と区別して交通事故ということも多い。 道路交通法違反事件は,犯罪としては軽微なものが多く(1996年の全有罪者数約85万人のうち懲役・禁錮に処せられた者は約7000人であり,約97%は10万円未満の罰金である),また数が非常に多い(1996年に警察は約870万件を取り締まっている)。…

※「交通事故」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

ボソン

ボース統計に従う粒子。ボース粒子ともいう。スピンが整数の素粒子や複合粒子はボソンであり,光子,すべての中間子,および偶数個の核子からなる原子核などがその例である。またフォノンやプラズモンのような準粒子...

ボソンの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android