二人静(菓子)(読み)ににんしずか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「二人静(菓子)」の意味・わかりやすい解説

二人静(菓子)
ににんしずか

和三盆糖を用いた打菓子の一種。名古屋市の老舗(しにせ)両口屋是清(りょうぐちやこれきよ)の銘菓で、菓名は能の「二人静(ふたりしずか)」からつけられた。菜摘川(なつみがわ)(吉野川の別名)のほとりに若菜摘みに出た勝手(かって)神社の女人が「春立つといふばかりにやみ吉野の、山も霞(かす)みて白雪の、消えし跡こそ道となれ」と歌うところへ、里の女に身を変えた静御前(ごぜん)が現れ、やがて影の形に添うごとく「しづやしづ、しづのをだまきくり返し」と優雅な舞をみせる。その2人の静御前に見立てた菓子は、和三盆を紅白に丸く打ち分け、その二つをあわせて球型につくる。薄い和紙にくるみ、指頭大にひねってあるが、紙を開いたとき、手のひらに転がる姿が愛くるしい。

[沢 史生

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例