一向・頓(読み)ひたぶる

精選版 日本国語大辞典 「一向・頓」の意味・読み・例文・類語

ひた‐ぶる【一向・頓】

(古くは「ひたふる」か)
[1] 〘形動〙
① ただ一つの方向に強く片寄るさま。もっぱらそのことに集中するさま。いちず。ひたすら。
※竹取(9C末‐10C初)「親ののたまふことをひたふるにいなび申さむ事のいとほしさに」
徒然草(1331頃)二一七「人はよろづをさしおきて、ひたふるに徳をつくべきなり」
② 完全にその状態であるさま。すっかり。まったく。
※守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)「大菩提に於て(ヒタフルニ) 退転せじ」
③ 向こう見ずで、ひたむきなさま。
源氏(1001‐14頃)夕霧「ひたふるなる御心なつかはせ給そ」
④ 無理を冒して強引なさま。粗暴で配慮に欠けるさま。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘海賊のひたふるならむよりもかのおそろしき人の追ひ来るにやと」
[2] 〘副〙 もっぱらそのことに集中するさま、完全にそうであるさまを表わす語。ひたすら。
謡曲・清経(1430頃)「よそめにはひたふる狂人と人や見るらん」
[3] 〘名〙 向こう見ずで勇猛な士。
今昔(1120頃か)五「劔を帯せらむひたふる万人」

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