ロトカ(英語表記)Alfred James Lotka

改訂新版 世界大百科事典 「ロトカ」の意味・わかりやすい解説

ロトカ
Alfred James Lotka
生没年:1880-1949

アメリカの統計学者,物理化学者,数理生物学者。オーストリアに生まれ,ヨーロッパで教育を受け,アメリカに渡る。化学工業会社などに勤めながら,1907年より人口成長と化学反応の数理を同時に研究し始める。11年に近代数理人口学の基礎を与えた論文を発表したのを皮切りに,疫学や生態学の分野における数理モデルの研究を次々と行う。ジョンズ・ホプキンズ大学に招かれた20年には,減衰しないでいつまでも振動が続く化学反応系,あるいは植物と草食動物とから成る生態学的系の数理モデルを提出,後者はボルテラV.Volterra(1860-1940)の研究と並んでたいへん有名なものとなった。24年には生命保険会社に統計コンサルタントとして入り,人口統計などのしごとを行うかたわら,いろいろな分野の数理モデル研究を続けた。一見かけ離れた分野のように見えるこうしたいろいろな研究は,主著《物理生物学原理》(1925)の中で統一的に把握されており,この本は物理生物学・数理生物学の古典として有名である。
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世界大百科事典(旧版)内のロトカの言及

【ガウゼの法則】より

…このような考えはC.ダーウィンの自然淘汰説の主要な柱でもあったため,多くの研究者によって古くよりいろいろな形で主張されてきた。数式モデルによってこのような考えに理論的な考察を加えたのはボルテラV.Volterra(1926)とロトカA.J.Lotka(1932)が最初であるが,1934年にソビエトのガウゼG.F.Gauseが酵母菌とゾウリムシを用いて初めて詳細な実験的研究を行い,種間競争によって一方が他方を駆逐してしまうという現象を明確に実証したところから,後にこのような考えがガウゼの法則(仮説)と呼ばれるようになった。この呼び方には異論もあり,競争的排除則あるいは競争的置換則と呼ばれることもある。…

【安定人口・静止人口】より

…人口の再生産要因(出生と死亡)と人口の基本構造との関係についての画期的な一般理論が,20世紀の初頭,アメリカの生物学者・人口学者A.J.ロトカによって開発された。これが安定人口理論と呼ばれるものである。…

【ガウゼの法則】より

…このような考えはC.ダーウィンの自然淘汰説の主要な柱でもあったため,多くの研究者によって古くよりいろいろな形で主張されてきた。数式モデルによってこのような考えに理論的な考察を加えたのはボルテラV.Volterra(1926)とロトカA.J.Lotka(1932)が最初であるが,1934年にソビエトのガウゼG.F.Gauseが酵母菌とゾウリムシを用いて初めて詳細な実験的研究を行い,種間競争によって一方が他方を駆逐してしまうという現象を明確に実証したところから,後にこのような考えがガウゼの法則(仮説)と呼ばれるようになった。この呼び方には異論もあり,競争的排除則あるいは競争的置換則と呼ばれることもある。…

【生態学】より

…そこでは,害虫の抑圧または有用魚の増殖という課題からして,初めから個々の種の個体数が対象であった。その発展のきっかけはA.J.ロトカ(1925)とV.ボルテラ(1926)の数理モデルの提出とG.F.ガウゼ(1934)の実験的研究で,そのころからこれは個体群生態学と呼ばれるようになった。動物の個体数は生まれれば増え死ねば減る。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」