リーベルユディキオルム(英語表記)Liber judiciorum

改訂新版 世界大百科事典 「リーベルユディキオルム」の意味・わかりやすい解説

リーベル・ユディキオルム
Liber judiciorum

654年ごろ,レケスビントの時代編纂された西ゴート王国最後の法典。第8回トレド教会会議の承認を得て公布されたといわれる。西ゴート・スペインではこれより前にエウリック法典(475ごろ),アラリック抄典(506),レオビギルド法典(6世紀末)の3法典がつくられていたが,エウリックとレオビギルドは西ゴート人,アラリックはローマ人にそれぞれ別個に適用すべく立法されていたのに対し,リーベル・ユディキオルムは初めて両民族の共通法として編纂,公布されたもので,王国法統一の象徴とみることができる。12編500以上の法律からなる。編の表題は法律,裁判,婚姻血族,契約,犯罪・拷問,窃盗・詐欺,暴行・傷害,逃亡者,土地の分割・時効・境界,病人・死者,職権濫用の禁止・異端追放である。内容は大半がローマ法に起源をもつ。西ゴート王国滅亡後もイスラム支配下のキリスト教徒と新たに発生したキリスト教徒国の一部(カタルニャ,後にレオン)で効力を保っていたために,8世紀以降も引き続いて写本がつくられていた。これら〈ウルガタVulgata〉と呼ばれる写本の中には第1編の前に原本にはなかった序章を置くものもある。ウルガタの一つが13世紀中葉カスティリャでフェルナンド3世の時代にロマンス語に翻訳されフエロ・フスゴFuero juzgoの名でいくつかの都市フエロ・ムニシパルとして与えられ,現行法としての生命を回復した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報