日本大百科全書(ニッポニカ) 「リチャード(1世)」の意味・わかりやすい解説
リチャード(1世)
りちゃーど
Richard Ⅰ
(1157―1199)
プランタジネット朝2代のイギリス王(在位1189~99)。異名獅子(しし)心王。ヘンリー2世の三男。1169年アキテーヌ公領を受ける。73年兄ヘンリーと弟ジェフリーの父王に対する反乱に加担。83年リチャードの敏腕を懸念した兄ヘンリーの攻撃を受けたが、兄の死で彼に王位継承権が移った。しかし父ヘンリー2世は彼を遠ざけたので、彼はフランス王フィリップ2世と連合して、89年父王を逮捕し、王位の継承を認めさせた。同年父王が没し、リチャード1世として即位、同年末第3回十字軍に参加した。途中シチリアでフィリップ2世と不和となったが、パレスチナにおいて十字軍兵士を指揮して敵王サラディンと戦いエルサレムに迫った。しかし十字軍兵士の分裂とイギリスにおける弟ジョンの暗躍のためサラディンと講和し、92年帰途についた。同年末ウィーンでオーストリア公レオポルトに捕らえられ、93年神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世に引き渡された。イギリスでは総額10万ポンドの身代金(みのしろきん)が徴収されて王は釈放され、94年ようやく帰国。その後も大陸領経営に専念し、ガイヤール城を築いてフィリップ2世と対峙(たいじ)したが、99年リモージュ辺で戦傷死した。治世の大部分を外国で過ごし、イギリス国民には戦費調達のため重税を課したが、イギリスには、それに耐えうる立派な行政、財政組織が発展した。
[富沢霊岸]